宇都宮大学広報誌 UUnow 第40号
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UUnow第40号 2016.7.20●10■実は身近?なナノ粒子最近、名前の一部に「ナノ(nano)」という言葉が入る商品を見かけます。ブロック玩具の「ナノブロック」や音楽プレーヤーの「iPod nano」など、「ものすごく小さい」という意味で使われているようです。「ナノ」は10億分の1を意味する言葉で、1ナノメートルは10億分の1メートル、おおよそ水の分子1個と同じ大きさです。この小さいスケールで色々なものを作る技術が「ナノテクノロジー」です。とても先の未来に実現するような技術に思えますが、既にナノメートルサイズの材料がインフルエンザ検査薬の赤・青などの発色や液晶ディスプレイを色鮮やかにするのに使われています。写真の赤色(左側)と紫色(右側)の水溶液はそれぞれ直径約10ナノメートルと50ナノメートルの金の粒(金ナノ粒子)が入っています(高校化学で習う「コロイド」の一種)。金ナノ粒子はサイズや表面の状態が変わると赤→青に至る色調変化を示します。先ほど述べたインフルエンザ検査薬では、インフルエンザウイルスと結合する特殊な表面処理を施した金ナノ粒子を使い、粒子表面状態の変化で色調変化が現れます。ちなみにお隣のきれいなステンドグラスはドイツ・ブレーメン大学での国際会議のエクスカーションで訪れた教会にあったものですが、ここの赤は溶融したガラスの中に金ナノ粒子を混ぜることで彩色しているとのことで(中世に確立した技術だそうです)、そう言われてみると金ナノ粒子分散液の赤色と似ている気がします。金属ナノ粒子の発色は「表面プラズモン共鳴」という現象に基づきますが、半導体ナノ粒子では異なる現象で発色するものがあり、「量子ドット」と呼ばれています。インターネットで「量子ドット」や「量子ドットディスプレイ」で検索するときれいな色の液体や鮮やかな彩色のディスプレイの写真が見つかると思います。ナノ材料を液体で使うPROFILE東北大学大学院工学研究科化学工学専攻博士課程後期修了、東北大学反応化学研究所(現 多元物質科学研究所) 助手、宇都宮大学工学部助手、講師を経て2012年より現職、専門分野:化学工学、熱・物質移動、化学的表面処理、ナノ材料やナノ材料分散流体の合成と応用、博士(工学)工学研究科物質環境化学専攻 准教授 佐藤正秀工学研究科物質環境化学専攻 准教授佐藤 正秀■銀ナノワイヤの迅速合成と電気を通す透明膜の作成ここで例に示したナノ粒子は、液体中にあたかも溶けているかのように均一に分散した状態を長期間保てるので、この液体を例えばインクジェットプリンターのインク(ナノインク)として使えば、パソコン上で描いた回路パターンを直接いろいろな材料の上に印刷で作ることが可能となり、各種電子機器製造プロセスの大幅な簡略化やこれまでにない電子機器が出来る可能性があります。私たちはナノインク原料の一つである、直径数十〜百ナノメートルで長さが直径の数百倍以上ある銀や銅などの金属ナノワイヤに着目し、質の良い金属ナノワイヤを出来るだけ簡便・迅速かつ大量に合成する方法について研究を進めています。このうち銀ナノワイヤは、硝酸銀のエチレングリコール溶液の高温加熱で作るポリオール還元法と呼ばれる合成法が一般的ですが、長い銀ナノワイヤを得るためには数時間の高温加熱が必要であるという問題点があります。この問題を解決するため、私たちはマイクロ波合成装置(加熱原理は電子レンジと同じ金ナノ粒子分散水溶液とブレーメンの教会のステンドグラスマイクロ波合成で得られた銀ナノワイヤインクとPETフィルムに銀ナノワイヤインクを塗布して作成した導電フィルムーナノインクとナノ流体ー

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