宇都宮大学広報誌 UUnow 第40号
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UUnow第40号 2016.7.20●12―この研究(Fairy Lights)のいきさつは?筑波大学の落合陽一先生、東京大学の星貴之先生らと共にチームで研究をしました。落合先生はコンピュータグラフィックスの映像を実世界でどう描くかという分野の先生で,フェムト秒レーザーを使ってなにかをやりたいということで宇都宮大学に来られました。宇都宮大学のオプティクスセンターは全国でもトップクラスの設備です。チームとしては、落合先生が全体監督およびソフトウエアの部分を担当し、僕たちはハードウェアの部分、オプティクス(光学)や実験の部分を担当しました。Fairy Lightsはその2つを掛け合わせて生まれました。 ―この研究で苦労したことは?ディスプレイシステム自体に結構苦労していたので、技術の部分にも苦労はありますし、あとは光を直接触るというアイデアを持ってきたことも1つのブレイクスルーでした。ディスプレイなので、見た目がおもしろいということも重要だと思います。しかし、そこに関わる論文を出すうえでの様々な実験もやらなければ学術的に評価されないので、しっかり基礎を固めてプロジェクトを進めなければなりませんでした。それがどのように実証されて、どのような現象が起きているのか。研究として成り立たせるには学術的な部分も必要になってきます。学術性とエンターテイメント性のバランスですね。―立体ディスプレイにかける思いは?元々、光を使って何かをやっていきたいと考えていました。立体映像が直接出てきたらおもしろいというシンプルな思いですね。立体ディスプレイは映画ではよく登場するのに実際にはまだありませんよね。特殊なデバイスなしで、実際の空間に立体映像が描画できる。今よりもさらに映像が進化していけばこっちの方向だと思います。僕たちはそのプロトタイプを提示したところです。今は小さい形ではあるけれど、これから改善していくことができます。将来、それを可能にすることを目標に研究を続けていきたいと思っています。(*1)1フェムト秒は10-15秒(1,000兆分の1秒)(*2)体積型ディスプレイ volumetric display都宮大学のオプティクス教育研究センターでは日々様々な光学に関する研究や実験が行われている。中でも今回、数々の賞を受賞した『Fairy Lights inFemtoseconds』は、空中に光を描画するだけでなく、実際に人が触れて触覚を感じとることができる(写真下)。今回はその研究に携わっている熊谷幸汰さんにオプティクスセンターを案内してもらい、実際に光を見て、触れてきた。―どんな研究をされていますか?情報フォトニクス研究室に所属し、学部の3年生の後半から早崎芳夫先生、長谷川智士先生の下で修士、博士と続けて研究をしています。受賞したFairy Lightsも研究の一部であって、元々はレーザーで描画する立体ディスプレイを研究することが僕のモチベーションです。フェムト秒レーザー(*1)という、光の点滅の間隔がフェムト秒単位の非常に短い時間のオーダーのレーザーを用いて表現しています。―目指しているものは?今、映像は基本的に2次元映像ですよね。3次元映像の技術もありますが、それは左右の目で違う映像を見せているレリーフのような立体感であって、後ろ側に回って見ることはできません。あくまでも画面から飛び出ているように見える映像であり、それは見る角度によって見えなくなる部分や視野の制限があるのです。その制限をなくしてどこから見ても3次元の立体映像として見ることができるのが、いま僕が研究しているボリュームディスプレイ(*2)というものです。SF映画などではよく目にしますが、現実にはまだいろいろと試行錯誤がなされている段階です。先程見てもらったように、蛍光スクリーンであればカラー化、Fairy Lightsのように空気に直接描画すれば映像に触れるなど、スクリーン自体を変えることによってそれぞれ異なる全く新しいことができるようになります。レーザーで絵を描く、それに加えてスクリーンの材料を活かした映像の描画方法を模索しています。『Fairy Lights inFemtoseconds』宇https://youtu.be/AoWi10YVmfEアジアデジタルアートアワード 2015 インタラクティブアート部門優秀賞受賞 『Fairy Lights in Femtoseconds』工学研究科博士後期課程 熊谷幸汰*筑波大学の落合陽一先生とオプト早崎研究室との共同研究の成果"Fairy Lights in Femtoseconds"は、Youtubeでご覧いただけます。https://www.youtube.com/watch?v=zZ48v3GhYqI*熊谷さんが研究しているボリュームディスプレイの紹介動画です。

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