宇都宮大学広報誌 UUnow 第40号
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UUnow第40号 2016.7.20●2■変えたことが前例になる東京・霞ヶ関、農林水産省食料産業局長室。少し緊張気味の学生から宇大発ベンチャーが開発した包装容器「フレシェル®」に入ったスカイベリーを贈られ、笑顔を見せる櫻庭局長。果肉に触れずに輸出できることを説明され、「コストはどのくらい?」と、すかさず聞き返す。「(農水省は)輸出にも力を入れているので、こういうものもヒントになります」  こんなやりとりからインタビューは始まった。「ここはとてつもなくレベルの高いものを求められるところ、自分の実力では10年ももたないだろうと、最初は腰が引けていました」と入省時の思いを明かす。それから36年間の官僚人生。「仕事がおもしろかったのでしょうね。福島県や北海道、経済企画庁でも仕事をしました。同じことばかりやっていない。いろいろなことにチャレンジできた。その時点その時点でやりたいことがあった」と振り返る。「敢えて新しいものに取り組みたかった。そのつもりで仕事をやってきました。『役所は前例主義』という話をよく聞くと思いますが、前例を一度変えてみる、それを2年3年続けて行けば、変えたことが前例になります」。『食育』の一般化やトレーサビリティの導入など新たな分野に向き合って来た。今は介護食品のJAS規格化に取り組む。新しいことに挑む原動力とは?「私の場合は現場です。メーカ―の工場現場などで実際に働いている人、農業の場面では生産者、そういう人たちと議論や意見交換するところから生まれてきます。役所の仕事も民間と変わらない。良い商品とは役所で言えば良い政策です。良い商品は売れていきますが、良い政策には予算がついてきます」■農業に直に触れる実習が新鮮だった秋田県の出身。宇都宮の雷の多さに驚いたという。「雷は冬に鳴るものだと思っていた。秋田ではみぞれが降る頃にものすごい雷が鳴る。宇都宮に来て、なんで雷が夏に鳴るのか不思議だった。当時、宇大に雷の研究をしている先生がいて、〝雷の道〞があることを教わりました」農場での間引き作業やみかんの缶詰作りなど農業実習が特に印象に残っているという。「農業経済学科は社会科学の文献などの調査が中心でしたので、実際に農作物に触れたりする実習が非常に新鮮でした」福島県の農家に泊まり込んでの調査実習は一番の思い出。「学生たちは3、4人ずつに分かれてそれぞれの農家に宿泊するのですが、一緒に泊まった学生の1答えのない世界に立ち向かうOB.OG. INTERVIEWPROFILE秋田県出身。1980年宇都宮大学農学部農業経済学科卒業。同年4月農林水産省入省。’01年総合食料局消費生活課物価対策室長。’02年大臣官房参事官。’05年総合食料局食品産業振興課長。’08年北海道農政事務所長。’09年大臣官房情報評価課長。’11年大臣官房審議官(兼大臣官房国際部兼生産局)、(兼総合食料局)、(兼食料産業局)を経て’14年7月より食料産業局長( ’16年6月まで)。農林漁業の6次産業化や農産物の輸出拡大を進めるとともに、伝統野菜など地域固有の地域産物の復権と振興に向けて、地理的表示保護法の成立などに尽力してきた。現在、農林水産省顧問。前農前農林水産省食料産業局長林水産省食料産業局長Eietsu SAKURABA櫻庭 英悦「答えのない世界にどう向かって行くのか、それぞれの立場からアプローチして欲しい」。宇大生へのメッセージを求められて櫻庭英悦前農林水産省食料産業局長が語った言葉である。その思いは、前例主義に陥ることなく、新しいことに果敢に挑んできた自らの官僚人生と重なる。【写真上:右からインタビュアー/宇都宮大学国際学部4年・伊勢万梨乃、同農学部3年・後野仁奈、櫻庭英悦氏】

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