宇都宮大学広報誌 UUnow 第40号
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極限的な状況を体験した学生がかなり在籍しています。それまでのように平穏な状況が続くと思われていた世界とはまったく違う世界を体験している学生が増えてきているという印象です。モリソン私はアメリカ人ですが、日本では何も言わなくてもわかってくれると思い込んでいる人が多いのですが、国際学部では自分の意見をはっきり言わないとダメです。田口相手が理解してくれるとは限らない状況の中で、言葉を紡ぎ出したり、自ら行動を起こしたりしなければいけない環境の中に、既に国際学部生はいるということだと思います。また、企画力を持っている学生が多い。こちらから言わなくても勝手にやり始める。印象的な学生と言えば、去年、卒論の最優秀賞をとった学生はすごかった。隠れストリートチルドレンとみなせるような、家にいられない若者たちと寝食を共にしながらフィールドワークして日本の若者の貧困問題をあぶりだした。髙橋私のゼミの学生は、フィンランドの最終処分場『オンカロ』に赴いて、処分場担当者や市民にインタビューして放射性廃棄物処理場建設をめぐる合意形成について卒論を書いています。国際学部全体のカリキュラムの中で自ら考え、行動する自律的な学生が育ってきています。田口私の育てた学生が2年連続で美術史の大学院に進んでいます。2人とも大学院の美術史の権威から高い評価を受けています。他大学の美術史専攻から来ている学生を飛び越えて突出した論文を書いてしまう。国際学部はそういうポテンシャルを持っている場だと思っています。髙橋全体の学生数は少ないけれど能力を発揮する学生があちこち出てくるというのは学部の魅力に加えて少人数教育の良さが意識として持っていることが国際学部の一番の特色だと思います。『38講』の中で全教員がそれを体現しています。『38講』の中で『どんなエッセーにも、小さなもの、弱いもの、スローなもの、異質なもの、複雑なものを見落とすまいとする意志が流れている』と書かれていますが、いろいろな問題に対して多視点的にアプローチし考えていきましょう、ということが社会学科と文化学科融合への動きと理解しています。―多様性が国際学部のキーワードスエヨシ学生の特徴にも多様性があります。沖縄から北海道まで日本全国から学生が集まっていますし、留学生も多い。国際学部の教室は空間そのものが多国籍なのです。様々な国の人たちや、様々な地域の出身者がいます。それから女性も多いです。それが何を物語っているのか、というのが非常に大事なことです。モリソンおもしろい。海外に行かなくてもいいくらいの環境です。髙橋基礎的な学問から実践的なところまで含めて多様な構図になっているところも特色の一つだと思います。留学の形態も実に多様です。スエヨシ多国籍化、多様化している現実社会の縮図が国際学部の環境にある。授業環境、学びのプログラムなど、すべてが今の社会の縮図になっていると思います。―自律的に行動できる学生髙橋ゼミ、サークル、留学などいろいろなことを通じて自律的、オリジナリティを持って行動できる学生が増えてきているという感触があります。国際学部は東北出身者も多く、中高校生の時に東日本大震災の出ているのでしょうね。―混沌とする社会の中で希望を持ってモリソン留学生の役割が大きい。日本の学生と留学生が相互に学び合えるグローバル環境をキャンパスにつくることが大事です。髙橋ますます垣根が無くなっていって、学生はもっと多様化していく。活動的に動くばかりが重要なことではなくて、原典をしっかり読んで学問的深さを追求する学生もいていい。垣根が無くなっていく中で、学びの多様性も増えていって欲しいと思います。多視点というところと少人数教育という部分は、これからも続けていきたいですね。松村国際学部は国立大学で初めての試みとして、日本語を母語としない外国籍の生徒に門戸を開く外国人生徒入試制度を設けています。今年度からこの制度で入学した学生が一緒に学んでいます。外国にルーツを持つ児童生徒を教える現役の先生を受け入れる内地留学制度もあります。国際学部の精神を具現化した取り組みです。髙橋若い人たちに伝えたいことは、まず自分で考えて、何にでもチャレンジすること。世界の多様性に目を向け、今まで当たり前だと思っていたことを、疑問視することが大事だということです。混沌とする社会の中で希望を持って、未来は自分たちでつくるんだという感覚を持っていただきたい。松村与えられた問題に答えを出そうとするのではなく、誰も問題とは言っていないことに問題を見い出す、これってどういうことなのかなと自分の頭で考える。それをより自覚的にやっていくのが、国際学部という場なのです。田口卓臣准教授専門:フランス文学・思想モリソン・バーバラ准教授専門:英文学と言語スエヨシ・アナ准教授専門:ラテンアメリカ論松村史紀准教授専門:国際政治論・近現代中国論・東アジア国際政治髙橋若菜准教授専門:国際環境協力論田巻松雄教授/学部長専門:国際社会論・地域社会論『原発避難と創発的支援』ー活かされた中越の災害対応経験ー編著:髙橋若菜田口卓臣   松井克浩(発刊:本の泉社)『越境するペルー人』ー外国人労働者、日本で成長した若者、「帰国」した子どもたちー編:田巻松雄スエヨシ・アナ(発刊:下野新聞社)『世界を見るための38講』ー国際学部の多様な分野の専門家たちが贈る38講ー(発刊:下野新聞社)

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