宇都宮大学広報誌 UUnow 第41号
7/16

OHstrigolOHOsorgomolOOOOHsolanacolOOOOOstrigolOsorgolacOOOOOOOHOrgomol7-oxoorobOOOOOOHOOHOlanacolfabacOOOHOOOstrigolsorg7●UUnow第41号 2016.11.20―植物の花の咲き方や、種子、果実の数を左右するということは、農業生産に大きな影響を与えるということでしょうか。「そうですね。食料作物やバイオマス原料となる作物の生産性を上げたり、栽培作業の効率化に繋がるのではと考えています。一方で、根寄生雑草の防除と関連して、別の課題も出てきました」―それは一体どのような課題でしょうか。「根寄生雑草の一種であるストライガの発芽を促進させる化学物質という意味で『ストリゴラクトン』と名付けられました。ストライガは東欧の民話に出てくるストリゴイという吸血鬼にちなんで名付けられたようです。他の植物に寄生して養分を吸い取ってしまう姿はまさに植物の『吸血鬼』。そんな『植物の吸血鬼』を覚醒させてしまう物質と名付けられてしまったことで、悪役としてのイメージが固定化されてしまいました。農作物に有益な部分も多いので、ストリゴラクトンをかわいそうに思うところもあります(笑)」◆グローバルな農業課題の解決に向けて―ここまでお聞きしてきて、先生の研究や「ストリゴラクトン」という物質が世界の食糧生産に大きな影響を与えるものだということが理解できました。今後の先生の研究グループの研究の方向性について教えてください。「ストリゴラクトンには、植物と菌根菌との共生を促進し、植物の無機養分(主にリン酸)の吸収を助け、病気に対する抵抗力を高めるといった大きなメリットもあります。現在こちらのメリットを活用する方向でも研究を進めています。肥料や農薬の使用量低減に繋がるので、根寄生雑草防除と併せさらに研究を深化させていきたいと考えています」―最後に、先生がこの研究にかける思いをお聞きしたいのですが。「ストリゴラクトンの活用は、これまで述べたとおり世界的に重要な研究テーマです。本学はこの分野において世界でも顕著「ストリゴラクトンの発生を抑えると、根寄生雑草の発芽も抑えられ、雑草対策にはなるのですが、同時に枝分かれや菌根菌(『ストリゴラクトンの働き②』。ストリゴラクトンによるもう一つのメリット※1)との共生にも影響を与えてしまうのです」―なるほど。あちらを立てればこちらが立たずといった感がありますね。「この課題を解決するため、他大学との共同研究を通してストリゴラクトンが生成される前段階の物質であるカーラクトン酸メチルを発見しました。カーラクトン酸メチルはストリゴラクトンと同様、植物の枝分かれを抑制しますが、ストリゴラクトンよりは根寄生雑草の発芽を促進させる働きが弱いことがわかっています」―これで作物生産の増加と根寄生雑草の防除が両立できる可能性が出てきたわけですね。「はい。ただ具体的な応用に向けての開発はこれからであり、研究はいまだ緒に付いたばかりです」―「ストリゴラクトン」、そのインパクトがあるネーミングに非常に惹かれるものがあります。まるで特撮映画の怪獣みたいな名前ですが(笑)、意味や由来はあるのでしょうか?な実績を残しており、今後さらに大きな貢献ができる研究環境にあると自負しています。根寄生雑草の被害は全世界に及んでおり、特にアフリカ諸国における被害には甚大なものがあります。こういった農業におけるグローバルな課題を解決するため引き続き努力していきたいですね」※1菌根菌菌根を作って植物と共生する菌類のこと。土壌中の糸状菌が、植物の根の表面または内部に着生したものを菌根という。菌根菌は植物に着生後、土壌中に菌糸を張り巡らし、主にリン酸や窒素を吸収して宿主植物に供給する。代わりにエネルギー源として、植物が光合成により生産した糖などの炭素化合物を得る。そのため、植物は菌根菌と共生することにより、栄養分の乏しい土地での育ちが改善される。(出典:「枝分かれ調節ホルモンの新しい分子のかたちを発見」平成26年11月21日、国立大学法人宇都宮大学、国立大学法人東北大学、公立大学法人大阪府立大学)◆米山教授と共同でストリゴラクトンの研究を進める謝しゃ肖男しょうなん助教がストリゴラクトンの構造解析研究により平成28年度日本農学進歩賞(主催:公益財団法人 農学会)を受賞しました。これは農学の進歩に顕著な貢献をした者を顕彰する賞で、40歳以下の若手研究者に贈られます。研究室で液体クロマトグラフ-タンデム型質量分析計( LC-MS/MS)を用いて指導にあたる米山教授

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 7

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です