宇都宮大学広報誌 UUnow 第42号
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UUnow第42号 2017.4.20●12■英語教授法研究と第二言語習得研究私の専門は英語教授法研究です。第二言語習得研究に基づき、日本人学習者のための効果的な英語教授法を研究しています。現在、日本の英語教育は大きな変革を迎えようとしています。今年2月14日には文科省から新学習指導要領案が公示され、小学校3年生から外国語教育が始まり、小学校高学年では英語が教科化されること、それに伴い中学校英語の指導・内容にも変化があることが明示されました。そのような中、小学校を基点とした中学校・高等学校それぞれの発達段階に沿い学びをつなげる英語教育は必須であり、それについて研究しています。■World Englishesと世界の外国語教育私がこの道に進んだのは、自身の社会経験が契機のひとつとなっています。大学卒業後商社に勤め、そこで世界中のさまざまな英語World Englishesに出会い、体験的に学ぶ機会を得ました。アメリカ・イギリス英語とは異なる発音や文法でも、堂々とコミュニケーションを図る人々に圧倒されました。その一方で、日本の大学を出た大変優秀な社会人の方々が「一生懸命勉強したけれど、自分の英語は使えない」と嘆く姿を見て、日本の英語教育の抱える根源的な問題について考えるようになりました。そこから幼稚園から大学の英語教育に携わり、国際交流基金によるボスニアヘルツェゴビナと日本の英語教員教育交流研修等、さまざまな国の外国語教育視察研究にも従事する中、日本の英語教育の現状と国際比較の観点をふまえ、日本の文脈における効果的な英語教授法とはどのようなものか研究を続けています。■ユニバーサルデザインの視点を取り入れたCLILによる英語教育すべての児童と生徒にとって学びと意義ある英語教育の実現を目指してPROFILE上智大学大学院博士課程外国語学研究科言語学専攻。言語学修士。専攻は英語教授法研究、第二言語習得研究、児童英語教育。幼小中の英語教育に携わり、東洋英和女学院大学非常勤講師等を経て、現職。教育学部 准教授 山野有紀教育学部 准教授山野 有紀もうひとつ、自分の研究に大きな影響を与えているものがあります。それは教育困難校での教育実践です。特に中学校での英語授業については多くの反省が残っており、自身の研究課題の原点となっています。赴任当時、英語でのインプットとやりとりを重視した授業を目指し、生徒からの発話を促す際や、帰納的に文法について考えさせたり明示的に話したりする際には日本語を使いながらも、できるかぎり英語での授業を行おうとしました。しかし、理想と現実は全く違っていました。英語を話し出しただけで教室から逃げ出す生徒、中学2年生でも自分の名前さえアルファベットで書けず机の上に足を投げ出す生徒たち。それは、今考えると学習困難、音韻認識に弱さを抱えたディスレクシアと推測される生徒たちの精一杯の悲鳴だったのですが、当時は授業が成り立たず、どのように指導すべきか、毎日悩み苦しんでいました。思考錯誤する中、煙たがられながらも、とにかく生徒に寄り添い、生徒が興味を持ちそうな内容を見つけ、Howard Gardner博士の多重知能の視点を取り入れた実践を試みた時、初めて授業が成立したのです。年度末の最後の授業で、机の上に足を投げ出していた生徒がアルファベットで自分ボスニアヘルツェゴビナの小学校での英語教育交流授業言語教育に関する本

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