宇都宮大学広報誌 UUnow 第42号
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わたしの学生時代わたしの学生時代白百合女子大学文学部では児童文化学科長の東洋(故人・元東京大学名誉教授)先生の下で、現在に至るすべての研究の基盤となるものを教えていただきました。主に『Child Development and Education in Japan』という教科書で学びました。東先生と白田賢二(現スタンフォード大学教授)先生、ハロルド・W・スティーブンソン氏(故人・元ミシガン大学名誉教授)の共編著です。スティーブンソン氏は学習・発達心理学の第一人者で、特に本著では、アメリカと日本の算数と国語教育の国際比較から、日本の教育の優位点を示し、その差が生じる要因を、その過程や環境に着目し、授業観察における児童の発話や学び方、教師の指導方法、親の教育の関わり方の違い等から分析し、研究されています。白田先生は第二言語習得研究の第一人者で、本著では児童の日本語と英語の言語習得の比較研究から、思考と言語の発達についても考察されています。子どもの発達と教育について、多角的な観点から学ぶことができて、非常におもしろいと思いました。また、当時の世界の最新の教育研究について英語で学んだ経験も、現在のCLIL研究に深くつながっています。13●UUnow第42号 2017.4.20の名前を書こうとしている後ろ姿を見た時は涙が止まりませんでした。けれどそれが自分の限界でした。このクラス全員をもっと伸ばしてあげたかった、どうすればよかったのか。そこでCLIL(Content and LanguageIntegrated Learning: 内容言語統合型学習/クリル)という外国語教育法にめぐりあい、特別支援教育を研究する小学校の先生と、通常学級において、学習困難を抱える児童を含めた全ての児童にとって学びある英語教育を目指す研究を始めました。CLILとは、外国語学習と他教科やテーマなど学習者の発達段階や興味に添う多様な内容を統合し、思考を促す活動と協同学習を取り入れ、相互文化理解能力をも育むことを目指す外国語教育です。学んだ知識をどう使うか、外国語の学びを自分の興味や個性とどのようにつなげることが可能なのか。それは世界とどうつながっていくのか。その問いに応え、全ての学習者に学びの意義ある外国語教育実現の可能性があると考えています。もともとはEU統合により外国語教育が必須となったヨーロッパを起源とし、日本のこれからの英語教育評価の指針のひとつとして参考にされることが多いCEFR(Common European Frameworkof References:ヨーロッパ言語共通参照枠)とよばれる外国語教育の指標を具現化するための外国語教育として開発されました。現在はヨーロッパだけでなく小学校からの外国語教育が推進されるアジアを含めた世界中で教育実践研究が広がっています。CLILのContent(内容)を取り入れる理論的意義は、前述した多重知能理論に拠ります。学習者の多様な個性を活かし興味を引き出すインプット・インタラクション・アウトプットを考慮した言語教育の必要性が根幹にあり、私は現在、このCLILを通して、英語教育にユニバーサルデザインの視点を取り入れ、授業分析、言語教師認知、心理言語学等の多角的観点から研究を行っています。実際にこれまでのCLIL授業研究から、普段の外国語活動を苦手とし学習困難を抱える児童の英語の学びと動機付けを高める可能性を示唆する成果が現れています。宇都宮大学では国内や海外の第一人者の先生方を招聘し学びの機会を持ち、実際に行った小中高での授業実践について研究発表会を開いたりしています。現在研究をご一緒している小中高の先生方は大変熱心で献身的に英語教育に取り組んでいらっしゃいます。この貴重な実践をこれからの日本の英語教育にいかすべく、宇都宮大学から研究成果を発信していきたいと思っています。無駄なことは何一つなかった     山野有紀その後、私自身も英語教育に携わり、上智大学大学院では日本の小学校英語教育導入を牽引された吉田研作先生(現上智大学言語教育研究センター長)、言語テストと評価研究の第一人者である渡部良典先生(現上智大学大学院教授)、日本の第二言語習得研究の第一人者である和泉伸一先生(現上智大学・大学院教授)、CLIL研究の第一人者である池田真先生(現上智大学・大学院教授)の下で学び、研究にいそしみました。素晴らしい先生方との出会いは、現在の研究を支える本当に大きな財産になったと思います。大学では勉強以外は音楽に専念していました。子どもの頃からピアノを習っていて歌も大好きだったので「グリークラブ」に入りました。パートはソプラノでしたが、ピアノも演奏したり、3、4年生では学生指揮者をしていました。幼児や小学生に英語を教える際には童謡や手遊び歌を、中高生には本物の英語音楽などを取り入れています。音楽は生徒の学びを促し動機付けを高めるひとつとなりえ、英語教育と深くつながっています。好きな音楽が役に立っていますね。学生には、ぜひいろいろな体験をしてもらいたい。私自身もいろいろな学びと経験を通して今がある、無駄なことは何一つなかったと思っています。広い視野を持つために、さまざまな人と関わり、海外に行ったりすることも大切です。失敗を恐れずに何事も挑戦して欲しいと思います。(「わたしの学生時代」取材・文/アートセンターサカモト・栃木文化社ビオス編集室)宇都宮大学にCLIL指導第一人者のイタリアの先生方を招聘著者として共同執筆しているCLILの本 グリークラブでピアニストとして演奏

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