愛知県立大学 研究活動報告 Re:Birth2021
4/12

02Re: Birth in SEARCH of COLL ABORATIVE RESEARCH究者と取り組んでいらっしゃる国際共同研究についておうかがいします。 手漉き紙のサマルカンド紙に焦点をあて、世界の紙の伝播を調査する研究をおこなっています。8世紀後半に中国からサマルカンドに製紙技術が伝わり、羊皮紙に代わる支持体(基底材)として、コーランや細密画の発展とともにイスラム世界において進化したのがサマルカンド紙です。その後、500年の時を経て西洋にも伝播し洋紙のもとにもなりましたが、技術が断絶したために、歴史や製造技術は明らかになっていません。それゆえ、サマルカンド紙を通じて世界の紙の伝播を解明し、紙の本質に迫りたいと考えました。です。愛知県公立大学法人内での職員の人事異動が共同研究のきっかけだったと耳にしています。 本学の学務部学務課で情報科学部を担当されている小林恭子係長が、2015年まで県芸大学務部芸術情報課に所属し、研究支援・国際連携係を担当しておられた関係で、2018年3月頃に柴崎先生から小林係長に連絡があったそうです。国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))に申請される研究課題で、サマルカンド紙の非国立図書館蔵の17世紀〜18世紀の紙,ブハラ国立博物館蔵の1732年の紙,イスラム大学蔵の16世紀のサマルカンド紙)は、市販の数万円−愛知県立芸術大学(以下「県芸大」と略記)の研−研究代表者は県芸大美術学部の柴崎幸次教授破壊解析ができる研究者を探しているとのことで、小林係長が情報科学部学部長の神山斉己先生に相談され、同年4月に柴崎先生が情報科学部の先生方に研究概要を説明してくださりました。情報科学部内で共同研究のマッチングをおこないましたところ、私の研究分野の技術で紙の分析が期待できたため、計画調書を共同作成し、同年5月に申請、10月に採択が決定されました。−共同研究の提案から計画調書作成まで1カ月という短期間でしたが、共同研究のすり合わせなどにおいて、ご苦労などがありましたでしょうか。 柴崎先生が情報科学部の教員に研究概要の説明をしてくださった時に、研究調査の方向性も精緻に示していただいておりましたので、私が研究している画像処理の分野が適していることは即座に明確になりました。計画調書の作成期間としては短かったのですが、互いに相手の専門知の何が必要か明瞭に理解できていたため、共同研究の射程に関する意思疎通もスムーズで、スピード感を持って進行することができました。−県芸大美術学部日本画専攻の非常勤講師である岩田明子先生も研究分担者として参加されています。県芸大側との役割分担についてお聞かせください。 岩田先生は県芸大の文化財保存修復研究所のメンバーでいらっしゃいます。文化財の保存修復時にも様々な種類の紙を使い分けるのですが、本研究では紙や絵具、装丁など写本に使用されている素材と技法を調査する分野を担当されています。柴崎先生はデザイン・工芸科に所属されており、紙を漉くこともされますし、紙を使った作品も制作されておられます。おそらく、他の分野ですと紙の上に書く文字や描かれる絵が研究対象になると思うのですが、紙を素材にして作品を制作されていらっしゃるので、紙そのものも調査対象となるのでしょう。紙の原料としてどのようなものが使われていたのか、どのような工程で紙が作られていたのかについても関心をお持ちです。−神谷先生ご自身の共同研究上の役割についてお尋ねします。紙の伝播を調べるにはさまざまな種類の紙質を解明する必要があるということですけれども、どのようにして解明するのかお聞かせください。 いまお見せしている拡大写真(右ページ写真左から,タシケントのデジタルカメラを使用して撮ることができます。一般的に、繊維を顕微鏡で調べようとすると、紙から繊維を抜き取るといった対象の破壊を伴ってしまいます。しかしカメラでの撮影ならば、対象を毀損することなく調査が可能になるわけです。しかも安価で簡便に世界中のデータを収集でき、研究者間で共有もできる。画像データの解析にあたっては、いわゆる人工知能、ディープラーニング技術を使い、この紙は何でできているのか、どのような時代につくられたのかなどを明らかにしてゆきます。−ウズベキスタンとの国際的連携はどのようにおこなわれてきたのでしょうか。 2019年5月にはじめてウズベキスタンを訪れ、調査をおこないました。その際に先方へは、デジタルカメラによる紙の撮影とデータ収集への協力依頼をおこないました。現科学研究費 国際共同研究加速基金 国際共同研究強化(B)インタビュー#01県大×県芸大世界の紙の伝播とサマルカンド紙

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る