□□□□□ □□□□山本 理絵 ( やまもと りえ )1988年3月、広島大学大学院教育学研究科博士課程中途退学、1992年に本学に赴任。教育学(教育方法学)・保育学を専門とし、教育・保育現場と連携して子ども同士の人間関係の発展・インクルーシブな集団づくり、子育て支援・地域におけるネットワークづくりに関する研究を進めている。支援などの研修も保健医療・看護分野と協力して実施できるように連携研究を行っています。 ②では、愛知県社会福祉協議会からの委託のもと、関係者にアンケート調査をし、スクールソーシャルワーカー、教員、保育士などによる「多職種連携研究会」の開催を通して、連携方法や研修プログラムについても検討しています。 ③では、愛知県内の外国人高齢者にアンケート・聞き取り調査を実施しています。看護学部教員や介護従事者等による検討会を行っていきます。 ④では、現地訪問ができないため資料収集が中心です。韓国の学生とのオンライン交流では多くのヒントが得られ、今後教育と研究を結びつけていけると期待しています。̶ 山本先生の所属する「生涯発達研究所」は、複数の他学部の教員や学外のソーシャルワーカーの方々で構成されていますが、今回の研究でもそうした連携はありますか?山本:はい。教育学・社会福祉学・外国語学部教員を含めた心理学専門の研究者という構成で取り組んでいます。また、看護学の研究者にも協力いただきながら、それぞれの専門性を活かし、多様なレベルからこうした大きなテーマにアプローチしていくところに、本研究の学術的独自性があります。久冨木原:学部連携することでボトムアップされ、研究に広がりが出てきますね。「いのちの学び」「学部間連携」、そして研究のための「外部資金の獲得」と、まさに本学のめざす三拍子が□った、最も理想的な研究体制ですね!山本:ありがとうございます。私たちの研究や取り組みが、少しでも愛知県のお役に立てればと思っています。̶ 次年度の研究の主点は?山本:教育・福祉現場をフィールドにしているので、これまでのつながりの中から、次年度は長久手市教育委員会と協定を結び、スクールソーシャルワーカーのスーパービジョンに力を入れていきます。科研費を活用し、教育と福祉をどう連携していくのかという実践的な方法を検討していくことができそうです。久冨木原:2016年のブラジル滞在の際、招待講演でアマゾンへも行きました。その時に素晴らしくすてきなポルトガル語俳句集に出会い、とても感動しました。 ところが、日本人移民の方々も、アマゾンで何十年にもわたって、日本語の俳句を詠み続けてきたことも知りました。熱帯風土の中で日本の季語の感覚と構成を守って俳句を詠むのには、涙ぐましい努力があったはず。その一方で、「ワニ」が身近にいる生活や、子どもの病気を治す薬草を先住民に教えてもらったという暮らしぶりも、俳句の中に生き生きと表現されている。異国の地でマイノリティとして助け合いながら共生する様子とともに、日本への強い郷愁にも魅了されました。次年度はぜひとも現地調査に赴き、俳 句 を詠 んで いる 方 たちへ のインタビューを切望しています。̶ 現在、学長、学部長としてもお忙しい中、研究は日々どのように進めていますか?久冨木原:まとまった時間を取るのは難しいですが…論文を読む時間はなくとも、最近は年表をよく見ています。□間時間の活用ですね。ブラジル移民の激動の歴史など、時代背景を読み取りつつ俳句を捉えていかないと、単に表現を追うだけでは浅くなってしまうので。山本:研究は、調査も多岐にわたるのでほとんど自転車操業です(笑)。ただ、学部の中期計画目標に沿った形で学生に参加してもらいつつ、教育と研究を分けずリンクさせながら取り組んだり、学内者だけでなく大学院修了生や各現場の協力者の力を借りることで、無理なく取り組めるよう工夫しています。 研究チームに当てはまるのは、それぞれの特徴に応じた多様な参加の仕方をする、「インクルージョン」という考え方。「みんなで一斉に!」ではなく、それぞれの研究や得意な分野で力を発揮してもらい、「ちょっと教えて」と相互につながる関係を構築する。特に若手の方には共同研究で実績を積んでもらい、科研費へのチャレンジにつながればと思っています。̶ 先生方は今回の採択課題において、学内外のさまざまな機関の方々との連携で研究を進めてこられたと伺っています。久冨木原:私は日本の古典文学が専門で、外国語はまったくできません。でもなんとしても「ブラジルとつながりたい!」と、現地の大学3校の研究者・研究機関をはじめ日本各地の日本人およびネイティブ研究者の約12名で共同研究をスタートしました。多様な視点・感じ方・考え方を学ぶ、とてもいい機会であったと同時に、気がついたら外国研究を始めていたという感じです。 未知の分野であっても「こういう研究がしたい!」と思ったら、協力してくれそうな方や機関に体当たりしていくんです(笑)。大切なのは、目的が確かで相手が「おもしろそう!」と関心を持てる内容であること。熱意を持って説明すれば必ず受け止めてもらえます。今回の経験で「自分の専門からも日本からも一歩飛び出せた!」という手応えを実感できました。山本:たしかに個人研究ではなかなか目に止まりにくい面もあります。他大学の個人とではなく、大学単位で一緒に取り組んだ方がより研究内容も深まるでしょうし、同じテーマでいくつかの大学間連携を活かしながら、共同研究に取り組めていけたらいいですね。久冨木原:個人研究は自己の研究の立脚点を固めることなので、とても大切です。それを基盤にして、専門からさらに一歩外へと踏み出してほしい。そして研究推進局にはぜひそのサポートをお願いします。もちろん一朝一夕では成らず、時間も労力もかかるかもしれませんが、そのぶん思ってもみなかった発見や出会いがあり、より豊かな研究が展開されることと信じています。̶ 本年度は、科研費の研究機関別女性採択比率上位30機関で20位(46.6%)となりました。新しい体制で歩みだした研究推進局に今後期待することは?久冨木原:女性採択比率が上位20位に入ったことは、たいへん嬉しいことです。これを追い風に、推進局には一層共同研究・異分野研究を推進し、活躍していただけるよう期待しています。 また、先生方には、個々の研究でご多忙とは思いますが、専門を深掘りしていただくと同時に、隣接分野との共同研究・異分野研究を通じてより視野を広げ、科研費獲得にも積極的にチャレンジしていただけたらと願っています。同じ研究テーマを共有して得意分野を相互にシェア専門の殻を突き破って、より豊かなフィールドへ
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