卒業生・教職員からの寄稿の入学も顕著だった。なお、1998年4月の入学者685名のうち、社会人は150名、夜間主コースは203名、通常の在学年齢を越える25歳以上65歳までの年齢層に属する学生は113名に達し、1999年4月の入学者にもほぼ同様な分布が見られた。まさに、長久手への移転は文字通り新たな開学であった。Ⅱ. たちまち訪れた難局その1半年で予算削減20%・十年間に10%定員削減 しかしながら、難局もまたたちまち訪れた。 来世紀につながる本学の明るい展望がこのようにはっきりと見えてきた開学後わずか半年の間に、本学をめぐる県内外の環境には、他方で前途を憂慮させるほどの激変が生じた。その最大のものは、日本経済の底知れぬ不況とその中で深刻化した金融不安である。この経済情勢を切り開く術をもたないわが国の政治システムもまた不安を大きく増幅した。 愛知県の1998年度の県税収入は当初予定額を1050億円下回ることとなり、大阪、神奈川などの現況とともにテレビの全国ニュースで伝えられるまでになった。影響は本学の当該年度予算の20%節減と翌1999年度以降10年10%の定員削減計画に関する指示となって顕在化した。本学の予算・定員はこれまでになく切迫した事態の下に置かれていた。その2続く教育研究費削減・国公立大学設置形態検討の開始 2000年度の本学教育研究費は1998年度の75%となり、文部省(当時)は国立大学法人化に着手し、自治省は公立大学会計制度の検討を開始した。 本学が1998年度の長久手町への移転・拡充に当たって掲げた①国際化、②情報化、③福祉社会及び④生涯学習社会への対応、という四つの基本目標は、移転・拡充が本格的に構想された1990年代初頭にはまだ見えていなかった地域社会変貌の主要な側面を的確に把握して設定されたものであった。四つの基本目標に沿って構築された学部・学科・大学院研究科・センター・施設等の教育研究組織は着実に成長し、当時の判断の先見性を証明している。 にもかかわらず、1990年代初頭には想像すらされないか、あるいは問題視されることの少なかった状況が顕在化しつつあることも直視しなければならなかった。たとえば、日本経済の構造的破綻の一環としての愛知県にお典拠:「移転・開学式典から半年」(『愛知県立大学学報』第42号(1998年11月10日)ける製造業の長期停滞は、県の法人税収入を大幅に減少させ、その結果が本学の教育研究費を直撃し、2000年度では、すでに触れたように1998年度の75%にまで落ち込んだ。四つの基本目標の下での教育・研究活動に影響するところは大きかった。 他方、2008年度の大学全入時代開始を導く少子化の進行、これらに基づく十八歳入学の学生たちの学力や志向に関わる変化、その中での国立大学の独立行政法人化の動向については、2000年8月から文部省(当時)の検討会議を構成する四つの委員会が審議を開始し、2002年3月末までには構想がまとまるはずであった。しかし、独立行政法人化後の国立大学の具体像には未確定な要素がなお多く、ましてやそれが公立大学の法人化にどのような形で連動するかは不明であった。 2000年度から、本学では、将来計画委員会を結成して委員を選出し、二十一世紀の愛知県地域社会に対し愛知県立大学がどのように貢献するか、という課題を自ら設定し、その解決に資する将来計画の立案を開始した。Ⅲ. 打ち続く難局に立ち向かうー教職員そろって草を刈る 本学は、1998年度の財政状況とこれに伴う厳しい節減が必至となり、美しい校内緑地の維持管理を業者に委託することが難しいという情況に直面した。学部事務室の職員を中心に、この年の10月から毎週1回、5〜6名で学内の草取りを行う案もあった。しかし、職員だけがするのでなく、教員や学生にも参加を呼びかけ、「キャンパスクリーン運動の日」を毎年定期的に設定してはどうかという提案も出た。学長、事務局長で適切な企画を考え、各学部でも話し合うことになった。結局、環境美化を学長はじめ、教員・職員・学生が可能な限り参加して行うこととした。 翌1999年も、環境美化計画が検討され、正門を中心とした外周部分で行うこととし、10月27日(水)の13時から14時にかけて行った。今でもおよそ20年前、穏やかに晴れたこの日の午後、教職員が、正門の左右に総出で展開し、草を刈った姿が、瞼に浮かぶ。 2000年も、植栽予算が十分でないため、年1回実施してきた教職員・学生による草取りを年4回実施することとし、第1回目を5月24日(水)に行い、その後の日程については再度考慮することとした。典拠:平成10年度第8回評議会議事録、同11年度第12回評議会議事録、同12年度第3回評議会議事録典拠:「四つの基本目標と新将来計画」(『愛知県立大学学報』第44号 2000年10月31日)19
元のページ ../index.html#21