愛知県立大学 新大学誕生10周年・長久手移転20周年記念誌
24/96

山田 正浩 元文学部日本文化学科 教授 県立大学は、1998年4月から現在の長久手キャンパスで新しい装いのもとで再出発したが、遡ってʻ87年横越学長の時、移転・拡充の動きが具体的に進み始めてから、10年を経てようやく実現したものである。大学としての計画を県に提出するため学内で喧々諤々の議論が進んだが、それを受けて ʼ90年12月には、県で「愛知県立大学整備計画に関する報告書」が策定された。当初、ʻ96年4月から、とされていたが、実際には2年遅れて実現したものである。移転・拡充の中身はなかなか盛りだくさんで、①長久手キャンパスへの移転 ②情報科学部の新設 ③文学部、外国語学部での学科増設 ④大学院(修士課程)の設置 ⑤女子短大(夜間)と外国語学部Ⅱ部を廃止し、昼夜開講制に模様替えする、など。後に何回も当時の文部省に事前相談に出かけたが、ある時の応対した係官氏が、正式のやりとりが終わった後の雑談の時、“一時にこんなにたくさんのことをやる例はほとんどない”と言っていたことを思い出す。 わたしが整備計画の中で関わったのは、a)一般教育の一部メンバーを母体にして学科を1つ起ち上げること b)整備計画の後半で計画全般の実務を担当する教員側のメンバー(調整委員)に加わったこと、であった。 a)整備計画が進行していた頃、全国の多くの大学で議論されていた課題の1つに“教養改革”があった。組織としての教養部は解体して大学全体で教養教育を分担する方向、教養部を専門教育も担当する“総合科学部”的なものに改組する方向、などである。上述の学内の議論は学長提示の“5つの大枠”を基にして進められたが、その1つに、「一般教育の改革」が挙げられていた。教養教育は全学で分担すること、一般教育教員の一部、人文、社会系教員を母体として1学科を立ち上げること、の2つについて学内の合意は早々に出来た。異論が出た記憶はない。ただ、県との間では厳しいやり取りがあった、と聞いている。自然系教員は情報科学部へ、体育教員は児童教育学科に転属することになった(通常教養担当スタッフに含まれるべき外国語教員は以前から文学部英文学科、外国語学部に所属していた)。学科は日本史の各分野を中心にして構成し、学科名称は“歴史文化学科”を予定していたが、途中で“日本文化学科”に変更した。“歴史文化学科”の名称に県からなかなかゴーサインが来なかったのである。わたしが退職する頃、また学部学科の再編が行われたが、その結果、現在の日本文化学部歴史文化学科になった。20年近くたって当初構想した学科名称に戻ったわけである。 b)整備計画全般に関わるようになって、学内で出席する会議の数、県庁に出かける頻度が増えた。それに当時の文部省に2か月か2か月半のインターバルで事前相談に出かける仕事が加わった。いつの間にか、朝学校に出ると、まず事務局の建設準備室(整備計画のために事務局内に臨時に置かれた)に顔を出して小一時間をつぶし、それから研究室に入る、そんなことがすっかり身についてしまっていた。この頃、大学の新設、増設は“大都市内での新増設は認めない”、“学生定員増は原則認めない”という厳しい制約下にあった。県立大学は名古屋市内から長久手に移るのだから前者については何の問題も無かった。後者をクリアすることが大きな問題であった。学生定員増は原則認めない、にもかかわらず定員増をするためには、いくつかある例外項目に該当させることが必要であった。外国語学部Ⅱ部は廃止するからその定員は振り替えられるが、足りない。短大も廃止するが、短大の定員は4大には振り替えられない…。例外項目の1つに“昼夜開講制”があって、これに該当させることが出来てクリアできることになった。1回目の事前相談で明確な返事が返ってきて、ホッとしたことが記憶に鮮明である。夜間の大学教育が当初の目的であった“勤労学生のための教育”からやや外れてしまっている、という認識があり、一方で高まってきた社会教育、生涯教育の需要に答えるため、昼夜開講制は当時の文部省にとって、“おすすめメニュー”の1つだったのである(夜間主コースに在籍しても、相当程度昼間主コースで単位が取れる)。 長久手に移る前年、秋だったと思う。当時の塩澤学長が仰るに、「何か記念に、高田キャンパスのものを長久手に持って行きたいんだけど…」、と。間もなく図書館の前の大きなクスノキが何本か、枝を取っ払われ根をブスブス切り取られた状態で長久手に運ばれていった。行った先は長久手キャンパスの南門に出る道と体育館に向かう道が分かれる三角形の所である。2年前、県大に用があって行った時“久しぶりに…”と思いついて足を向けてみた。1本だけ少し元気がないように見えた。22“整備計画”のころ

元のページ  ../index.html#24

このブックを見る