愛知県立大学 新大学誕生10周年・長久手移転20周年記念誌
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辻 孝吉 情報科学部情報科学科 教員 情報科学部設立初期メンバーであるということで本原稿の依頼を受けましたので、私が関わらせていただいた情報科学部の準備〜設立〜完成【?】を振り返ってみたいと思います。学部認可ということでいえば2回の認可申請(大学移転時、大学統合時)に関係させていただきました【ちょうど移転20周年・新大学設立10周年のスタート時期】。どれも初めての経験ばかりで、大変多くの勉強をさせていただき、貴重な経験の機会を与えていただいたことに感謝しております。 まず、私と愛知県立大学との関わりは、県大に情報系の新学部が設立されるということで、学部設立の三年前(平成7年4月)に赴任したことに始まります【文系の大学ということもあり、それまでは愛県大のことを全く知りませんでした(^_^;】。大学はまだ高田町(名古屋市内)にあり、歴史と趣のあるキャンパスが印象的でした【隣の中学よりも小さいかも?】。着任当時、学部は当然まだありませんので、所属は学長直属、校門のところにある仮設プレハブが居室となっていました 【親しい方からは「何か悪いことをして学長直属なの?」、「サティアンで怪しいことしてない?」などと言われたりもしましたが】。 情報科学部は、愛知県が平成4年3月に策定した「愛知県大学整備計画基本構想」に基づいて、情報科学への対応を図ることを目的として構想されました。具体的な情報科学部設立に向けては、設立準備室の職員の方々と情報科学部所属予定教員(最大時10名程)によって、外部委員からなる準備委員会からの意見を踏まえながらハード(建物)とソフト(教員、カリキュラム)について準備が進められました。 ハード的なことでいうと、今では違和感がないと思いますが、工学系(特に情報系)では技術的進歩が速いので大幅な値引き、リースを利用する、ということが多いのですが、当時はそういう発想で進めにくかったような記憶があります【ソフトに物品シールを張っていた時代ですので…】。 ソフト的には、カリキュラムに合わせて科目を担当していただく教員の方々を探すお手伝いもさせていただきました【現在いらっしゃる何人かの先生の若かりし頃の履歴書の写真が脳裏に⁉】。 カリキュラム的には、当初は「社会情報」とか「環境情報」とか文系に近い学科を構想されていたようですが、準備委員会や文部省(現文部科学省)からの意見を踏まえ、学部新設抑制の例外として設置するということもあり、理系の情報科学に近づけた内容に変化していきました。具体的な内容は、学部段階における情報専門教育カリキュラムの標準であるACM(米国計算機学会)の標準カリキュラムを踏まえて、情報科学部として持っていなければならない最低限の科目といくつかの独自の科目が配置されました。 そして長久手移転と同時に、平成10年4月に「情報システム学科」と「地域情報科学科」の2学科からなる新設学部として誕生しました。 初回の入試は受験者数が多いため、レインボーホール(現日本ガイシホール)で行い、試験はマークシート式で行いました。限られたスタッフの数で大きなトラブルもなく終了することが出来ましたが、今から考えると少し怖い気がします【支えてくださったスタッフの皆様には頭が下がります】。 開部当時は、情報科学系の理系としての認知度が低かったため、文系の学部と勘違いして入学してくる学生もいたようですが、教職員の高校訪問や予備校訪問など、機会をとらえた継続的な宣伝【?】の効果もあり、現在は理系として認識されているのではと思います。 学部発足後は、学部完成年の平成13年3月に学外委員による第1回外部評価を受け、自己点検評価を行いました【全国から情報系の著名な先生方に来ていただくことが出来ました】。その翌年、平成14年4月には1専攻からなる大学院情報科学研究科修士課程、平成16年4月には大学院情報科学研究科博士課程が無事開設されました。全部が完成した年度末の平成17年3月には外部委員による第2回外部評価が実施され、第1回の指摘への対応も含め自己点検評価を実施しました【資料などのとりまとめとともに評議員として参加させてもらいました】。そして、平成19年3月には無事、大学院博士課程までの完成を迎えました。 これで完成ではなく、前述の2回の外部評価や世の中の変化に対応するため、新しい学部の構想・準備がすぐに始まりました【この時は、構想新学部・大学院将来構想検討委員会委員長、カリキュラム検討委員会委員長としてとりまとめをさせていただきました】。学部は前回と同様にACMの最新の標準カリキュラムを参考に構成し、講義の多様化(演習、コンテスト、プロジェクト、ゼミ、などの導入)、PBLの導入、学部・修士を含めた6年一貫教育等【残念ながら一貫教育は推薦制度としてしか実現できていません(-_-)】を特徴とし、柔軟性を持たせるため2学科から1学科3コース【最初は3学科を構想していましたが、結果的にはコース制にすることで柔軟性を持たせられたかも】の学部教育とそれに合わせて大学院前期課程の1専攻から3専攻への拡充とプロジェクトコースの新設などからなる新学部・大学院が平成21年4月大学統合に合わせて無事設立されました【執筆時運用中のカリキュラムになります】。 以上が2回にわたる情報科学部設立と私との関わりですが、情報科学部は今後も時代の要請に応えるべく変化し続けることと思います【ここに書けなかったエピソードはまた別の機会に(^^)/】。 30情報科学部設立に向けて

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