愛知県立大学 新大学誕生10周年・長久手移転20周年記念誌
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若子 直 元事務部門長 名古屋市瑞穂区高田町の地から長久手の地へのキャンパス移転開学、同時に情報科学部の新設、長久手新キャンパスの遠方でありながらの高校生からの人気急上昇、入学志願者の急増。 暫くしての、設置者である愛知県の大学あり方検討会による議論開始、議論の行方は大学法人化と県立3大学のうち愛知県立大学と愛知県立看護大学の統合による新大学の設置。 平成元年から令和の現在まで、これらの愛知県立大学の殆ど全ての事象に関わらせていただくことになり、25年間余りが勉強勉強の毎日でした。なかでも、大学の法人化と愛知県立大学と愛知県立看護大学の統合による新愛知県立大学の設置の事務作業は質量ともに、膨大なものでした。 大学法人化の準備では、会計システムの抜本的な変換、つまり収入支出の大福帳の概念しかなかった役所会計から企業会計の基本である複式簿記への転換のための研修であったり、資産整理調査など、毎日の詳細な作業の積上げでした。そんな中、実際に公立大学法人としての出発が近づくにつれ、ある種の違和感を感じるようになりました。大学の現場の教職員の意識の中に、「大学の法人化というのは、大学の上に【法人】というものが来るらしい」との思いが湧き上がってきたということです。このことは、大学が単なる法人格を有するだけだと思っていた私には不思議な違和感ともいえる感覚でした。この違和感が消えていくには相当な時間が必要となりました。 平成19年4月1日、愛知県公立大学法人が産声をあげましたが、法人運営大学運営ともに事務作業を手探りながらこなしていく毎日でした。年度当初の混乱も少し落ち着きを見せ始めた初夏のころ、愛知県の大学改革のもうひとつの柱である愛知県立大学と愛知県立看護大学の統合による新愛知県立大学の設置の作業に関わることとなりました。 主に事務作業のとりまとめを担当する程度だと思っておりました。ところが、両大学の統合準備委員会の運営、統合スケジュールの立ち上げ、進行管理、膨大な書類作成等々、当時は法人本部総務グループ所属でありましたが、本来業務は全て犠牲にし、新大学設置業務に没頭せざるを得ませんでした。ここ最近の働き方改革などによる勤務時間管理などは無いに等しく、朝であろうが昼であろうが夜であろうが土日であろうが関係なく、どんなことがあっても期限までに文部科学省へ大学設置認可申請書類を届けなくてはなりませんでした。 これが、ただ書類を作成し届けるだけではなく、必ず「大学設置認可」を受けなければなりませんでした。これが、愛知県が公表した「愛知県大学改革基本計画」の大きな柱のひとつを立ち上げることでした。実際に私自身、作業をこなしていく過程でこのような重さに少しづつ気がついていき、時には気持ちが折れそうにもなりましたが、時の佐々木学長先生始め大学設置作業のリーダーであった、高島副学長先生並びに各学部学科のご担当の先生のご指導やご助言やご助力をたくさんにいただき、なんとか間に合わせることができました。今、思い起こせば本当に膨大な事務作業をよく、仕上げることができたものだと思います。おかげで、それまで経験したことのないカリキュラムのことであったり、授業概要やシラバスであったり、学則を始めとする規程集並びに教員構成や個人調書のことまでも関わらせていただき、大学運営のほぼ殆どを勉強させていただくことができました。併せて、文部科学省大学設置室へ何度も足を運び、質疑やら打ち合わせを重ね、提出期限の平成20年3月の最終週には1週間に3度も上京するなど、目が回るような思いをしながらも、文科省の担当官とも顔見知りになることができ、これも大きな財産となりました。 このようにして、大学設置認可申請書類の提出ができ、その後2回の補正申請を重ね、平成20年の10月、新愛知県立大学の設置認可を受けることが出来ました。この間に大学の現場では、新講義棟の建設を始め、サテライトキャンパスの整備であったり、新教務システムの契約並びに入試実施等々、平成21年度入学生受けいれ準備で忙殺されることとなりました。 平成21年4月新愛知県立大学開学です。 長久手キャンパスと守山キャンパス間の学生の移動であったり、カリキュラムの新システムの運営であったり、両キャンパスの学務系事務の連携であったり、大学運営面の教育研究審議会を頂点とする各種委員会運営であったり、統合前のそれぞれの大学の歴史や文化や慣習等々をすべて統合調整し、運営することが本当に大変でした。私自身は平成21年4月から守山キャンパスで事務を担当しましたが、長久手キャンパスの事務(特に学務系)と統合調整することに苦心したことが思い出されます。新愛知県立大学が真にひとつの大学として回り始めるのに3〜4年程の時間が必要であったと感じています。 新大学がスタートしてから、僅か10年余りですが、この間にも学長のリーダーシップのもとに、様々な改革が実行され(学内センターの組織改革、新教養教育の改革、国の補助金の獲得(iCoToBa)、次世代ロボット研究所設置等々)、さらに学生の努力もあり、採用された企業サイドからの評価が年々上昇しており、着実に愛知県立大学が成長していると実感しています。 私自身、今思えば、通算で約25年以上、こんなにも大学運営のことを体験し、また勉強することが出来、並びに文部科学省とのやりとりの体験までさせていただくことができ、ただただ感謝しかありません。私の人生の半分を愛知県立大学で創っていただきました。 歴代の学長先生始め学部長先生や各学科の先生方並びに事務職員の方々に深くお礼申し上げます。 愛知県立大学のますますの発展を心よりお祈りいたします。 48大学の成長とともに

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