愛知県立大学 新大学誕生10周年・長久手移転20周年記念誌
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○ 情報科学部長 神山 斉己 「社会を支える情報科学の拡がり」 情報科学部は、1998年4月、愛知県立大学の長久手キャンパスへの移転拡充と共に、愛知県立大学初の理系学部として誕生した。当時はITという言葉も世間には普及しておらず、インターネット黎明期であったが、1995年の阪神淡路大震災を契機に、災害時におけるインターネットの役割についても検討が進められ、1996年からインターネット災害訓練も実施されるなど、情報通信ネットワークがライフラインとしても強く意識されるようになってきた時代である。総務省が公表している「情報通信白書」の特集テーマを見てみると、インターネット、IT、ユビキタスネットワーク、ICT、IoT、ビッグデータ、AI、Society5.0、5Gといったキーワードの変遷から時代の変化を改めて感じることができる。情報通信技術(ICT)は、社会インフラ、ライフラインとして人々が日常生活を送る上で欠かせない存在へと発展してきた。こうした観点から、情報科学部では、情報科学と技術に関する基礎知識を身につけ、激しく変化する技術情報に対応できる能力を有し、高度情報社会を支えて社会で活躍できるIT人材を養成し、地域に送り出していくことが重要と考えられる。 一方、学部レベルの包括的な人材育成の取り組みと並行して、研究室レベルでは、災害を直接の対象とした教育研究も進められている。2020年度には、看護学部、教育福祉学部と連携し、災害弱者の避難シミュレーションに関する研究が立ち上がった。さらに、愛知県福祉局との連携により、障害者や外国人など日本語の会話によるコミュニケーションに支援が必要な人を主な対象とした支援ボードをスマートフォン・タブレットのアプリとして実現する、コミュニケーション支援ボードのIT化に関するプロジェクトもスタートした。 これまで情報科学部を巣立った約1500名の卒業生の多くは、ICT企業をはじめ一般企業のICT関連部門等に就職し、社会で幅広く情報基盤を支える役割を果たしている。本学部では、情報科学の理論や技術を身につけ社会で活躍することはもちろん、情報科学の意義や価値を人に語り、社会を幸せな未来へとつなげられる人材の育成を心がけている。困難な状況では、知識や技術を生かし周りの人たちの情報の受信、発信、ネットワーク環境のサポートなどにも力を発揮してくれるものと確信している。意見交換の様子68

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