愛知県立大学 Guide Book 2026
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IIII PREFECTURALUNVERSTY2026ACH愛知に根ざし、世界を思いやる いま、地球上で悲鳴が聞こえます。かつては「気候変動」と自然現象のように捉えられていた事柄も、現在では気候について「危機」や「正義」が語られ、「気候難民」ということばもあるほどです。かなりの程度、私たち人間が自分たちの惑星を傷つけている面が認識され強調されるようになってきました。その最たる戦争や武力衝突は、一向に止みません。文化や習慣を異にする人たちの多様性や共生は、私たちが手放してはならない大切な価値でありながら、その実現にはため息が出るほどの難題が存在し続けていることを思い知らされます。 大学での学びは、社会や世界の出来事とともにあります。だからこそ私は、この大学を優しさと強さを持った学生で満たしたいとの思いを込めて、この大学のビジョンを、「愛知に根ざし、世界を思いやる」としました。「あいち」の地名は古く万葉集に出てくる「あゆち」が転じたことに語源があるといわれます。「愛知」の文字の語源を外国語にたずねれば、日本語では「哲学」と理解されるギリシャ語由来の「知を愛する」フィロソフィー(Philosophy)にたどりつきます。(私がこの大学の学生だった頃、「知」を表すソフィアSophia(ギリシャ文字でΣΟΦΙΑ)の文字がプリントされたトレーナーが生協で販売されていたものです。) 私なりに言い換えると、これは物事の根源を問い続けることです。学生には自分もその一部を成す世界から目をそらさずに、問題を突き止め、凝視して、熟考する力を得て欲しいのです。2021年度から装いを新たにした本学の教養教育「県大世界あいち学」は、まさにそういうものです。「多文化社会」や「データサイエンス」の文理の入門科目は1年次の学生全員が受講します。学部間の協働や企業や地方公共団体など外部機関と連携した主体的な学びも複数採り入れ、海外研修を含む教養外国語教育の内容も充実しました。今後は愛知県立芸術大学と協力しながらアートや失敗から学ぶ要素も加えて、本学独自のリベラルアーツをめざします。 振り返れば、この大学は時代と社会の要請に精一杯応えるために、常にしなやかに変化してきました。戦後の日本国憲法の施行と同じ1947年に創設された県立女子専門学校と1968年創立の県立看護短期大学に始まるこの大学は、2009年に一つの愛知県立大学として生まれ変わりました。2023年10月に完成した「愛県大史WEB」(https://www.aichi-pu.ac.jp/apu_history/)はその歴史を、日本と世界の変化と連動させながら描いています。 戦後の平和が始まるなかで女性の主体的な学びから生まれたこの大学は、2026年に80周年を迎えます。文系から文理の大学へと歴史を刻んできました。混迷を極め続けるこの世の複雑さを問い学ぶには、これからはいっそう学問領域を横断する視点が求められます。愛知県立大学がこの地になくてはならない存在であり続けるために、私たちはこれからも優しさと力強さを諦めずに、世界の変化と社会の要請に応える教育を深めていきます。03

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