長期学外研究「フランス語圏西アフリカにおける手話言語とろう者コミュニティの記載的研究」|MEMO|国際関係学科「旅の写真展」亀井教授が所属する国際関係学科では、毎年秋に学科の学生や教員が世界各国で撮影した写真を集めた「旅の写真展」を実施しています。これまでの8年間(9回)の展示で出展した写真の総数は624点に上り、撮影地は75の国・地域に及びます。2|学生・教員の活躍|6 手話は、世界各地のろう者たちの集まりにおいて伝承されている自然言語である。世界には100種類以上もの多様な手話言語があり、音声言語とは異なる「もうひとつの多言語世界」を構成している。西アフリカでは、かつてフランスに統治された経緯から、多くの国々でフランス語が話されている。しかし、ろう者たちの手話はフランス手話ではなく、アメリカ手話の影響を強く受けている。各地のろう者コミュニティを訪ね、手話で語られる文化と歴史の調査、記録を続けてきた。2017年度、1年間の在外研究の機会に、コートジボワールとフランスの2か国の大学に在籍し、現地調査、成果発表の機会を得た。アフリカ系アメリカ人ろう者の宣教師らによる海を越えた大事業、手話で教え学ぶ30校を超える学校拠点のネットワーク、ろう者の教員を手話で育てた国際的な人材育成システム、それらが欧米を中心とする手話教育の肯定と否定の歴史の傍らで、アフリカの地で育まれていった歴史が浮き彫りになった。フランス手話、アメリカ手話、カナダのケベック手話、フランス語圏アフリカ手話という、大西洋を囲む諸大陸の多様な手話言語にまつわる、伝播や普及、変容の歴史である。今回の在外研究の成果を踏まえ、環大西洋の手話言語伝播史の全容を明らかにすることを目標としつつ、アフリカ各地の手話の辞典編纂と、ろう者たちの文化、歴史を記載する民族誌執筆の仕事を、今後とも続けていく。 教養科目で手話に関する概論的な講義を行ってきたところ、語学としての手話教育を希望する学生の声が多く寄せられ、2015年度から外国語学部の専門科目「諸地域言語」の枠で「日本手話」が開講されている。各年度とも、愛知県内のろう者の講師を迎えて実施している。他学部の履修希望者もあり、将来的には全学的な開講体制を整えることで、学生たちの期待に応え、かつ地域福祉に貢献する取り組みと位置づけていくことが期待される。西アフリカ言語学会における全体講演(ガーナ共和国にて、写真右から2人目が亀井教授)
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