地域住民の協力を得て高齢者が地域の健康づくり教室で、生き生きと活動している人々に出会い、その主体性を促すヘルスプロモーション実践と評価に関する研究を行ってきました。久冨木原 確かに超高齢社会は、少子化問題と共に、日本の大きな社会問題で、とても重要な研究だと思います。それに誰もがいつか必ず高齢者になるのですから、若い人も自分のこととして考えていく必要がありますね。このような課題の中で、先生が現在、特に力を注いでおられるのは、どのような研究でしょうか?百瀬 2000年に介護保険制度がスタートし、介護支援システムの確立とともに人々の介護予防への関心も高まった一方で、認知症高齢者が急増してきました。しかし、認知症高齢者の日常生活に影響を及ぼす多様な症状や行動への対応に看護職・介護職は困難を感じることが多くありました。そこで、病院や高齢者施設の看護職・介護職が認知症高齢者に対して良質なケアが提供できる実践力を身につけられる教育プログラムを開発する研究に取り組みました。この研究も「認知症の人と家族の会」の方々の協力を得て行いました。認知症の人を介護した経験をもつ家族会会員の方々に模擬患者養成講座を行い、模擬患者を活用したシミュレーション教育にしたことで、臨場感のある、また対応技術の定着につながる成果があげられたと思います。久冨木原 超高齢社会において、認知症は喫緊の課題ですね。それを改善するための実践的な教育プログラムに取り組んで来られたということですが、その際に、家族会とつながったシミュレーション教育をされた点が、素晴らしいと思います。研究が直接、地域の人々に還元され、同時に、その方々とつながること自体が研究そのものになっているわけですから。ところで、地域に直接、「安全・安心」を還元するという点では、小栗先生の交通事故の分野における研究も同様だと思いますが、いかがでしょうか。小栗 交通事故軽減へのアプローチとして、小栗研究室では20年前から、ITS(Intelligent Transport Systems:高度とも言われておりますが、今回製造された甘酒は、米麹と酒粕によるハイブリッドで、しかもアルコール0%を実現しました。さらに乳酸飲料のような爽やかな味も特色です。そこで本学では、これを周年事業のひとつに位置付けて、「愛riche」と名付けました。この名称には、幾つかの意味や願いが込められています。愛知県と本学のシンボルである「アイリス(かきつばた)」を基に「愛」が満ち溢れることを願って、フランス語の「riche」で表現したのです。ここには門出を祝う「立酒」の意味も込められています。百瀬 学内で試飲会を開催したり、愛称を公募したりして、たくさんの人がかかわりました。また今年の卒業式と入学式では、全学同窓会や後援会のご協力を得て、卒業生・入学生全員に1本ずつプレゼントすることができました。学生たちには、とても喜んでもらえましたね。久冨木原 そうですね。本学の研究の特色のひとつとして打ち出すことができたのではないかと思います。それを学生たちと共有できたということは、ほんとうに嬉しいことでした。それでは、百瀬先生からもお話を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか?百瀬 日本は超高齢社会を世界に先駆けて迎えましたが、その進行速度が高齢化先進諸国とは比較にならないほど速かったため、国の高齢者対策も多くの課題を抱えてきました。加齢による身体的・心理的機能の低下に加えて、種々の老年症候群を併せもつために、社会的弱者と認識される高齢者が増えてきました。そこで私は、|特集・周年記念事業特別企画鼎談|1|MEMO|新大学誕生10周年と長久手移転キャンパス20周年という節目を機会に、愛知県立大学をさらに盛り上げていこうという熱い気持ちが学長はじめ両先生からも感じられる鼎談でした。今回の周年記念事業終了後も、本学を盛り上げていく気持ちを全学で持ち続け、みんなで協力して本学をより良くしていければと思います。
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