私は主に保育園・幼稚園の地震・津波、気象災害、流行性感染症、不審者といった危機に対応する方策の研究・教育・実践が専門です。インフルエンザやエイズなどの感染制御が専門でしたが、東日本大震災の被害分析から地震・津波避難の方法論を本にまとめたことが現在の仕事の起点です。災害対策では、人口の約半数を占める乳幼児、傷病者、障がい者、高齢者などの災害弱者の命をいかに守るかが肝です。誰でも簡単に災害弱者になります。「とにかく逃げろ」ができる人に対策は必要ありません。特に乳幼児は無理が効かず、全面的な保護が必要です。現在、名古屋市を中心に30を超える保育園・幼稚園とともに具体的な対策を進めており、その成果は確実に成長を続けています。私は、乳幼児対策が災害対策のグローバル・スタンダードであることに気づきました。乳幼児は災害弱者の特質のすべてを有するからです。さらに、現在の災害対策に人間の視点が欠けていることが問題であることにも気づきました。この点で、私が看護学部を基盤としていることは幸運です。災害弱者は看護の対象者そのものであり、看護学は、災害弱者の命を守るための知識や技術を、すでに豊富に有しているからです。この取り組みによって、幸いにも本学看護学部は愛知県の災害弱者を守る代表的な組織として認識されつつあります。しかし、看護学部の力だけでは十分ではありません。総合的危機管理である災害対策には、本学の諸学部が専門とする教育や福祉、言語、情報、文化といった人間生活の様々な要素が深く関わるからです。今後は、看護学部を基盤としつつ諸学部の高度な知的資源を有機的にリンクさせて、「愛知県立大学は本県の災害弱者対策の中枢」と県民から認知され信頼されるまでに、この取り組みを発展させたいと思います。愛知県立大学の使命は、県民の豊かな文化と健康を守り育て、それを伝えていくことにあるはずですから。愛県大を愛知県の災害弱者の命を守る対策の研究・教育・実践の中核に 看護学部教授 清水宣明|MEMO|「学部間連携」と「いのちの学びと探求」は学長ビジョンで掲げられており、災害弱者対策で各学部が有機的にリンクし、接続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取組の1つでもあります。本学が目指すべき姿を実現するために、全学協働で活動できればと思います。|学生・教員の活躍|7
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