愛知県立大学 学報 2023 vol.12
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理事長インタビュー1日本経済の発展と共に成長した会社員時代久冨木原学長 40年以上の会社員生活の中で、海外駐在もずいぶん長かったとか。移動距離でいうと地球80周分にもなるそうですね。古川理事長 ほとんどを海外とのつながりの中で過ごしました。私がトヨタ自動車販売株式会社に入社した当時は、まだ日本からの完成車輸出だけの時代でした。日本中心の企業からグローバル企業へと変化していく、そういった時代を過ごしてきました。自分の年齢やステージの変化と足並みをそろえるようにしてビジネスのステージも変わっていくような、大変恵まれた環境でいろいろ経験をさせていただいた。最初に海外に行ったのは、入社1年目で派遣されたベルギーのブラッセルでした。久冨木原学長 入社1年目でいきなり海外勤務だったのですね。それまで留学のご経験はおありだったのでしょうか?古川理事長 ないない。貧乏学生でしたから海外なんてとんでもない。飛行機に乗ることすら珍しい時代ですよ。1年目で派遣されたのも人材育成の一環だったのでしょうが、当時、会社全体でもヨーロッパの駐在員は20人くらいしかいなかった。だから年齢や立場は関係なく、戦力として期待されたわけです。久冨木原学長 それではとてつもない使命感とプレッシャーを感じられたのでは? 古川理事長 実際のところ、そうでもありませんでした(笑)。だけど、毎日が新しい経験だしエキサイティングでワクワクしていましたね。久冨木原学長 いわば開拓時代を過ごしてこられたのですね。古川理事長 当時の自動車産業のステージは日本車の輸出が伸び始めた頃で、現地生産もしていない時代です。当然、現地輸入代理店やカーディーラーの皆さんとやり1とりをするために現地に溶け込まざるを得ない、そういう経験もすることができました。2社会に対してPaybackを ─ 就任を決めた理由古川理事長 ある時、スウェーデン人のビジネスパートナーが引退する時に「僕はこれでビジネスの世界からは卒業する。これからは社会に対してPayback─お返しをしていくんだ。」と話してくれました。その言葉が胸にすごく突き刺さり、自分も同じように考えるようになりました。ボランティアでもいい、若い人たちが未来へ羽ばたいていくための貢献ができればと考えていたわけです。今回、理事長就任のお話をいただいた時に、これが自分のやりたかったことなのだと感じました。久冨木原学長 その方との出会いが大きなきっかけとなったのですね。古川理事長 大きかったですね。私の会社員時代は、欧米諸国の方々がビジネス相手でした。私は欧米諸国の方々と多く接するうちに、次第に「欧米の人たちだって変わらない。同じ人間だ。」と肌で感じるようになりました。3日本以外の国籍の人を「外国人」と呼ぶことをやめた古川理事長 フランスに駐在していた1980年代は現地輸入代理店の建物の中に1つだけ部屋を借りて、そこに私とフランス人秘書だけ。もちろん資本関係のない現地輸▲古川理事長ヨーロッパ駐在中の1978年、スイスにて特集 2023年4月より、愛知県立大学を運営する愛知県公立大学法人の新しい理事長として、古川真也氏が就任しました。新理事長就任を記念し、本学久冨木原玲学長がインタビュアーとなり、長くヨーロッパや北米に駐在し、人材育成に携わってきた経験や、理事長が感じた愛県大の魅力、将来にむけて考えていることについて、お話を伺いました。古川理事長就任記念インタビュー

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