愛知県立大学 学報 2023 vol.12
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理事長インタビュー3授7多様性とクロスカルチャー、6コーヒーブレイク:職員とも語りあう古川理事長 海外のメンバーへの教育で一番難しかったことは部下育成です。海外事業体の多くでジョブ型という働き方をしているから、上司にとっては部下も自分のライバルです。自分より有能になってしまったら困るので、部下育成には抵抗がある。まさにクロスカルチャーということ。部下育成は社会の仕組みに帰着してしまうので、日本では当たり前にできていても、海外ではなかなか浸透しない。そのあたりが多様性を考える上で一番難しいところだよね。だからこそ共通点、つまり両者の根底にある価値観に立ち戻ることが大事。越えられない壁があるとは思ってはいけない。どうしたら越えられるかを考える。それが必要なことです。職員本学の環境は、まさに多様性そのものです。大学は学生・教員・職員という異なるカルチャーを持つもの。さらに本学では文理看護を備えた5学部があり、愛県大と県芸大、愛知県との関連など…多様な要素に満ちています。入社企画部主査L&Fカンパニー海外事業部長長に就任1951年生まれ東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学 博士(文学)専門分野: 日本古代文学(源氏物語)、日本韻文史2006年: 愛知県立大学文学部教2009年:同日本文化学部教授2013年: 同日本文化学部長2016年: ブラジル・サンパウロ大学大学院客員教授2018年4月: 愛知県立大学で初の女性学長に就任愛知県公立大学法人理事長古川 真也愛知県立大学学長久冨木原 玲ほどそろっている大学はなかなか無いのではないでしょうか。古川理事長 公立大学としては、地方自治体とも良い関係を築き、大学の教育研究にうまく活かしていきたい。久冨木原学長 現在、法人のトップとしてかなり引いたところから広角レンズでご覧いただいているという感覚です。今はそれがありがたくもあり、その視点だけで留まらないことも期待しています。本学を良くしていきたいという思いがある一方で、これまでの伝統や譲れない主張もある。そういう時、理事長はどんな言葉をかけられますか。古川理事長 そうですね。教員も職員も、なぜここ、愛県大で働いているんですか?という、その質問に立ち返ると答えは自然と見えてくるように思います。究極的には、自分だけのためではなくて社会のため、人のためじゃないのかと思うわけです。もっと良い大学、もっと良い研究、もっと良い人材の輩出が出来れば、そのことが社会に認められ、受け入れられ、社会への貢献にもつながるという事だと思います。大学を取り巻く環境は大きく変化し、少子化のもたらす予測できる未来をどう勝ち残っていくかは、すべての大学の喫緊の課題です。社会の変化やニーズを直視し迅速な対応を求められるのは企業も大学も同じだと思います。久冨木原学長 伝統と変革、私と公、そこに生じる葛藤をいかに乗り越えるかが私たちの課題の1つでもありますね。古川理事長 ある意味では、企業の方がずっとシンプルかもしれないですね。皆が同じ目標に向かって動いているし、指示命令系統がはっきりしている。大学は必ずしもそうではない。様々な構成員がいて、皆それぞれに自分の思いや主張を持っている。だけど究極的には何のために教育し研究するのかと考えると、やはりより良い大学として社会に貢献していくということではないでしょうか。久冨木原学長 私も理事長と同じ気持ちです。ただ、「良い大学にしていこう」としたとき、構成員それぞれが多様なアプローチの方法をもっているのです。古川理事長 例えば大変立派な研究成果を発表できれば、そこで働く教職員や、学ぶ学生も愛県大に誇りを持てるし、世間からも大学を高く評価してもらえる。研究に打ち込むのであれば、その点を徹底的に追究してほしいし、そのプロフェッショナルな心意気で臨んで欲しい。愛県大に携わる皆が、誇りとプライドを持ち、ここで学んで働いて良かったなと思え、教育・研究の成果が、今まで以上に強く世の中に出て行く。しかもそれが社会や地域、ひいては日本や世界のニーズにしっかり応え、貢献していけるようになると最高だね。それを実現できるポテンシャルは十分に備わっていると感じています。あとはそれをどうやって実現していくかということですね。教員も職員も、それぞれ立場は違うけれど、皆さんの知恵に期待しています。そして、どんな大学にしたいかという根本の課題に対して、それぞれの立場で為すべき役割は何かと言うことを考えて欲しい。そうしてもっともっと良い愛県大になっていくといいなと思っています。▲1978年、アイルランドのパブで現地輸入代理店社長とのひとこま1953年生まれ東京外国語大学外国語学部卒業1977年: トヨタ自動車販売株式会社 2001年: トヨタ自動車株式会社 事業2002年: 株式会社豊田自動織機 トヨタ2005年:同社取締役2010年:同社専務取締役2015年:同社代表取締役副社長2018年:同社常務監査役2021年:退任2023年4月: 愛知県公立大学法人理事それを強みと希望に変える愛県大へ

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