愛知県立大学 学報 2023-24 vol.13
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学生・教員の活躍5▲ 次世代ロボット研究所にて (写真左・伊藤 正英 准教授、右・藤田将成さん)※学生が自主的に企画する研究プロジェクトを公募し、審査を経て採択されたものに対して研究資金を助成する制度 愛知県立大学中世史研究会は、2017年より愛知県大府市にある延命寺に所蔵される古写経、『大般若経』を調査しています。延命寺の『大般若経』は、室町時代に勧進という募金方式で調達されはじめ、現在600巻が完存しており、愛知県有数の文化財の一つです。この『大般若経』は、今なお延命寺において写経会や大般若会で使用されている生きた文化遺産です。 今年度は学生自主企画研究※の助成を受け、2023年10月28日から12月10日に、大府市歴史民俗資料館にて企画展「調査された大府展─延命寺・大般若経─」を開催しました。『大般若経』を展示の中心としつつ、地域の動向が垣間見える「延命寺文書」や、延命寺の由緒などを書き上げた江戸、明治期の帳簿も展示し、様々な時代から見る「中世の大府」を展示室内に再現しました。 11月25日には、「あいち県民の日」にあわせて大府市歴史民俗資料館にてギャラリートークを行いました。大勢の方にご来館いただき、「大府の歴史を中世まで遡れるとは興味深い」など様々な声を聞くことができました。『大般若経』の末尾には地元住人の名が書き加えられていて、地域の結束が感じ取れます。延命寺は尾張と三河の国境に位置しており、今後は国を超えた地域の繋がりを探っていきたいと思います。──外国語学部から情報科学研究科への進学を決めたきっかけは。 新型コロナで在宅時間が増えた頃、「考えたことをビジュアル化するAI」に興味を持ち、プログラミングの勉強を始めたことがきっかけです。教養教育の授業で出会った情報科学部の友人の誘いで、ロボカップサッカー小型リーグチーム「RoboDragons」にも参加し、情報科学への興味が深まりました。──これまでの学びを今後どのように活かしていきたいですか。 学部時代には、「語学力」と「多様な関係性・価値観をフラットに捉える視点」を身につけることができました。現在は情報科学を通じて何かを実現するための技術を学んでいるので、将来は人と人との交流を円滑にするようなコンテンツをつくりたいと考えています。例えば、視覚・聴覚中心のゲームを楽しめない不自由さを持つ人たちも取りこぼさず、誰もが楽しめるものをつくりたいです。交流に活かすためにできるだけ使える言語も増やしたくて、今ではコンピュータ言語を含めて7言語使えるようになりました。──藤田さんを指導されている伊藤先生からひとことお願いします。 「RoboDragons」でも、メンバーに刺激を与え、チーム開発の活動を活性化しています。その姿勢を継続し、挑戦的な研究や開発をねらってほしいです。▲ 調査の様子(延命寺にて)▲ 学生によるギャラリートークの様子▲ 展示された『大般若経』学生インタビュー 文理5学部が揃う本学の多様な教育環境を活かし、分野を越えた学びに果敢に挑むー 本学外国語学部を卒業し、この春から大学院情報科学研究科に進学した藤田将成さんにお話を聞きました。6年間におよぶ学生の調査の集大成 企画展『調査された大府展─延命寺・大般若経─』を開催しました〔異分野への道〕外国語学部から情報科学研究科へ  ─誰ひとり取りこぼさない「人と人との交流のあり方」を目指して─

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