秋田県立大学 研究情報誌 Roots Vol.02
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12知識のルーツ 近年、メディア等でAIという言葉をよく聞きますが、みなさんはその中身の数学についてはご存知でしょうか?それは「最小2乗法」と言って、データの組が複数与えられたときに、xとyの関係を表すもっとも近いと思われる関数(実用上は1次関数であることが多い)を求める方法です。元データと近似する関数の差の2乗を考えるので、そのような名前が付いています。 何か難しそうな話になってきたぞ・・・と思っているそこのアナタ、実は高校1年生でも十分理解できる話なのです。その正体は「放物線」です! 数式は省きますが、実はこの「放物線の頂点」と「最小二乗法の解(答)の求め方」は同じ解法なのです!よって、最小二乗法の答が無いという心配は必要ないし(放物線には必ず頂点がある!)、しかも答は必ず1通り(頂点のところだけ!)です。とてもうまい考え方だと思いますが、これは、約200年前にドイツの数学者ガウスが18歳で発見したと言われています。ガウスさん、若いのに凄すぎます!!上の理論から発展して、文字の識別や、さらには病気の診断計画数理研究グループ最適化数学で重要となる「凸関数」について、4年生の学生さんが解説をしながら理解を深めている場面です。や自動運転に繋がるのですね。 さらに本格的にAIの中身を知るには、高校・大学で学習する「微分」と「線形代数学(数学Bのベクトルの延長上の学問)」を合体させます。みなさんの中には、ベクトルを学習した人もいるかも知れませんが、物理でしか使わないものだと思っていませんか?いえいえ、ベクトルは「AIの数学」でもあるのです!  前節で登場した最小二乗法は、専門的には「最適化数学」というジャンルに属しています。 話は変わりますが、みなさんは理科で光の屈折に関する「フェルマーの原理(17世紀)」を習ったかも知れません。実は、これも最適化です。光がなぜ屈折するのか疑問に思った人もいるかも知れませんが、その理由は「最小時間の原理」なのです! それから、物理学と数学はとても関係が深いことが分かり、18、19世紀に力学・電磁気学などいろんな分野で研究されました。さらに時代が下り20世紀には、ロケットの燃料消費最小化の理論である「最適制御理論」が生まれました。冷戦時代には、アメリカとソビエト連邦によるロケットの飛ばしあい競争がありましたね。20世紀後半には、ロケットを飛ばす研究をしていた科学者が、今度は経済学の分野へ行き、新しい理論を生み出し今日に至っています。その他、みなさんがよく使っているカーナビゲーションシステムによる最適ルート検索も最適化の一種(ネットワーク最適化)です。最適化は本当に身近にたくさんありますね。 実は、経済学と最適化数学も密接な関係があります。身近な例として「じゃんけん」があります。じゃんけんには、グー・チョキ・パーという「戦略」がありますが、勝った場合は100円獲得して、負けた場合は100円を失うというゲームを考えます。このゲームをAさん、Bさんの2人で争います(右上表を参照)。それぞれの人は多くの利得を得るためいろいろと策略を考える訳なのですが・・・残念ながら、長い目で見ると0円が均衡解(参加者全員が納得する答)となり、その戦略はグー・チョキ・パーをそれぞれ1/3の確率で出す場合であることが「ゲーム理論」で説明できます。ゲーム理論と研究室のゼミの様子4年生の研究室メンバーに与えた数学の課題について、文献を持ち寄りながらみんなで議論している場面です。AIと2次関数最適化数学の歴史じゃんけんでも戦略?データ?身近なところに大学の数学・物理・化学・生物シリーズ②AIの数学と

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