秋田県立大学 研究情報誌 Roots Vol.02
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6 最近研究をしている中で気がかりなのは、森の結実豊凶の周期がズレてきているということです。結実豊凶とはマスティングとも言い、森の中で木々の種子の成り具合が同調して、年ごとに豊作・凶作が大きく変化する仕組みのことです。実は、多くの木々は毎年種子をつけるわけではなく、その成り年は同調する傾向にあるのです。その性質のために、森全体で種子が豊作の年と凶作の年が見られるのです。 ただ、近年その周期が少しずつズレてきています。樹木同士の同調性が崩れているのか、種子の量自体が減ってきているのかはまだはっきりとは分かりませんが、いずれ、森林の生態系に異変が起きていることには違いありません。近年は温暖化や長雨など地球自体の気候も大きく変化してきていますよね。マスティング周期のズレにはそのような環境因子も十分に考えられます。なぜ周期がズレてきているのか、それを知り、原因を究明する旅はまだまだ始まったばかりなのです。季折々に変わる森の景色に私たちは大きな癒しをもらっているからです。 だからこそ、森の変化を見逃してはいけません。今は少しの変化でも、この先の未来にとんでもなく大きな変化をきたすかもしれないからです。もし森がなくなってしまったら、生態系は崩れ、地球環境もおかしくなってしまうでしょう。もちろん、急に大きな変化が訪れるわけではありません。だからこそ、今、少しの変化があるうちに森の仕組みを研究し、その原因を探っていくことで、今後ピンチが訪れた時に手を差し伸べられると思うのです。それが長い目で見れば、森だけでなく地球や人類の未来を救うことにもなるでしょう。大好きな生き物たちが暮らす 森を守りたい 私が森に興味を抱いたきっかけは、生き物が大好きだったからです。小さい頃から生き物が好きで、犬やインコ、メダカ、カブトムシ、サワガニ…これまで飼ったことがある生き物は数知れません。生き物の中でも特に鳥が大好きで、鳥を見ているうちに鳥が住む森という世界をもっと知りたいと感じるようになりました。森は生き物たちにとってかけがえのないものですが、私たち人間にとっても同じことが言えます。森があることで生態系が保たれ、材木や紙類の供給が持続し、そして四一度諦めたからこそ分かる、 大学にいられることのありがたさ 今、大学院3年目。北海道から秋田に来てからは7年目になりました。研究、発表、研究、フィールドワーク…と目が回りそうな毎日も、楽しくて仕方がないんです。その理由は、私の珍しい経歴にあるのかもしれません。 実は私は現役で大学受験に失敗して一度

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