秋田県立大学 大学案内 2022
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伝統建築から読み解く、先人達の知恵や建築技法1983年12月生まれ。出身は中国山東省済南市。出身地から1300km離れた湖南省の大学を卒業した後、北京の外資系建築事務所に就職し、設計の仕事に従事した。25歳の時に日本へ留学。愛知県豊橋市、茨城県つくば市で過ごし、2017年から秋田へ。趣味は石鹸作り。建築計画学李り 雪せつ 助教LI XUEシステム科学技術学部 建築環境システム学科古き良き遺産を未来につなぐ建築学 私は、昔から古い建物が大好き。隅々にまで行き渡る匠の技と、それぞれの地域にある資源を活かしたひとつひとつ違う趣きが、いつも私の感性を刺激してくれます。出身の中国にいた頃は、休日に自転車を漕いで伝統建築を見に行くことが趣味でした。伝統建築のことをもっと知りたい!という想いが強まり、せっかくなら中国以外のことも学ぼうと、日本への留学を決めました。 現在は大学の助教として、茅葺き屋根の街並みを再生するプロジェクトに取り組んでいます。皆さんは、茅葺き屋根を実際に見たことがありますか?茅葺きは日本の伝統技法で、その歴史は古く、まさに日本の原風景。中に入ると感じる何とも言われぬ静けさ、茅の香り…そこにいるだけでストンと心が落ち着くから不思議です。しかし、茅葺き職人の高齢化による技術の消失や茅場の消失による材料供給の困難、葺き替え費用の高額化などにより、茅葺き民家は急激なスピードで減少の一途を辿っています。 秋田県では羽後町に代表的な茅葺き文化が見られ、国指定重要文化財の鈴木家住宅を始め多くの茅葺き民家が残っています。その一方で、職人が減り、空き家がどんどん増えてきていることに、危機感を覚えずにはいられません。 私の想いは、ひとつ。貴重な無形文化遺産の技術で建てられた茅葺き民家を一棟でも多く次世代に継承することです。そこで現地に足を運び、構造や建築法を調べて、持ち主や近隣の方にお話を伺って茅葺き民家に関する情報を収集。それを元に図面に起こし、データとして保存しています。また、茅葺き民家への共感や理解をさらに深めてもらおうと、茅でほうきを作るなどのワークショップを開催しました。今後は職人を交え、地域の人たちと一緒に葺き替えができたらな、とも考えています。 現在、神奈川からの移住者が羽後町の茅葺き民家を再生していて、今後民泊のオープンなど活用していく予定です。私や学生も一部を手伝わせていただき、とてもやりがいのある時間を過ごせました。ただ、私が一番願うのは、生活の場として現代に茅葺き民家が再生することです。そのためにも、維持管理などの細かいデータをまとめ、地域住民の想いを育て、茅葺き民家が現代の風景に自然に馴染む日を目指して活動を続けています。 秋田に来て4年、私と一緒に研究を進めてくれた学生が何人かいます。聞き取りや実地調査のため1日中歩きまわることも多いですが、フィールドワークが好き、アウトドアが好き、人とコミュニケーションをとるのが得意な人が大いに輝ける分野です。時代が先進するのは良いことですが、なくしてはいけない伝統もあります。ぜひ私と一緒に、古き良き伝統建造物を未来に繋いでいきましょう。地域資源を活かしたひとつひとつ異なる趣き日本の原風景・茅葺き民家の継承地道なフィールドワークが肝手足に耳…五感をフル活動!4

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