29 私は昨年の四月より、秋田酒造株式会社の杜氏を務めております。杜氏とは、酒造りの現場の最高責任者のことを言います。酒造りをする蔵人を束ね、蔵内の管理はもちろん、原料の取り扱いから、醪(もろみ)管理、上槽(醪をしぼり、清酒と酒粕に分ける)、貯蔵、熟成まですべての工程に目を配っています。酒造りは、米を蒸し、麹を造り、仕込むといった単純な作業だけでなく、麹菌や酵母等の微生物が、うまく働けるように温度、湿度等を管理する微生物学の知識が重要となります。 酒造りを志すきっかけとなったのが、入学してすぐの、各研究室を紹介するオリエンテーションで、中沢先生に言われた「酒に興味ないか?」でした。ただ漠然と生物系の勉強がしたいと県立大に入学しましたが、伝統的な職人の仕事だと思っていた酒造りが大学で学べることを、そこで知りました。 そこから、醸造学、微生物学、食品科学等を学びました。中沢先生の研究室に入ってからは、酵母の生態について研究し、酵母の培養技術や、お酒の分析技術等を習得しました。おかげで、自社での酵母培養だけでなく、秋田県の酵母開発事業にも参加させていただきました。 将来は、手に職をつけた職人になりたいと考えていたので、酒蔵に就職し、蔵人として働き今に至ります。今後とも秋田の発酵文化に貢献し、「米・水・麹・酵母」の力を生かせる酒造りを心がけ、安全・安心においしい酒を醸していきたいです。 16年ぶりに再会した教え子が、てきぱきと働いている姿を見ることができました。また、研究室で一緒に実験してきたことが、現在の仕事に活かされていると聞き、感激いたしました。FROM NEXT STAGE秋田酒造株式会社(秋田晴) 杜氏小舘 巌 さんKODATE Gen秋田県/花輪高校 出身生物資源科学部 応用生物科学科 4期生指導教員:中沢 伸重 教授醸造微生物学研究室中沢 伸重 教授生物資源科学部 失敗しても、次にどう活かすかの試行錯誤研究室での実験から学びました卒業生からのメッセージ
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