あっ! 原油だ! 泥だ!微生物だぁっ!!!499%が未知の生物・微生物を探し続ける「微生物ハンター」 「微生物ハンター」と呼んでくださる方もいるように、私の研究は微生物の生態系を調査することです。これまで山形大学や北海道大学大学院で研究を進めてきましたが、2年前に秋田県立大学に赴任してからは、秋田市と潟上市の油田付近に生きる微生物を採取して、「油を食べる微生物」を探しています。 秋田県は全国有数の油田が多い土地です。とは言え、稼働中の油田はほとんどありません。それでも原油が完全になくなるわけではなく、ほんの少し漏れる原油による環境汚染が危惧されています。 そこで目をつけたのが、微生物の存在です。もし、原油を食べる微生物がいて、さらに原油を食べて他のエネルギーに変える微生物がいるとしたら、素晴らしいことだと思いませんか?例えば、油を食べて電気を出すような微生物がいれば、クリーンなエネルギーの発見に繋がります。 低炭素社会が注目されている昨今、原油を資源に別のエネルギーを生み出す微生物を発見できれば、秋田県の新たな産業、新たな資源科学の発信になると考えています。 普段は学生と一緒に、秋田市や潟上市の油田に行き、原油が滲み出ている辺りの泥を採取してきます。そして実験室に戻り、油田の泥と同じ酸素がない状態を作り、餌として有機物を与え、長い時間をかけて培養していくのです。「どんな微生物がいるのか」ということ以前に、そもそもそこに微生物がいるかいないかも分かりません。そんな雲をつかむような状態で調査が進められていきます。地道に調査を続けていくうちに、ある試験管にポツッと生存が確認されたりします。肉眼では見えないけれど、確かにここにいる、そんな証を見つけた瞬間は飛び上がるほど嬉しいものです。それは中身の見えない福袋から当たりを発見した時のような、一気に胸の鼓動が高鳴る感覚に似ていますね。微生物が地球を救う!持続可能な社会への可能性 私は最初から微生物の研究を目指していたわけではなく、もともとは野鳥が好きで鳥の生態を研究するつもりでした。ですが、鳥が生きる自然環境そのものに興味が出て、その自然環境を守りたいと考えるうち、「地球の土台を作る生き物について知りたい」という思いに至ったんです。それはつまり微生物のことで、生態の99%が未知の生き物でした。ほとんどのことが解明されてない生き物がいるなんて、すごくロマンを感じませんか?しかも、1%しか分かっていないだけでも、微生物は食品や洗剤など、すでに人間の生活を大きく支えています。それが5%、10%解明されれば、今よりももっと人間の生き方をより良い方向に変えてくれると思うのです。 今後は、微生物の生態系を利用して地球環境に負荷のかからない新しい社会の仕組みを作っていきたいです。人類の文化活動は多少なりとも地球環境を汚染してしまいますが、微生物の力を借りれば持続可能な社会の基盤を作れるのではないかと期待しています。抑えきれない胸の高鳴りに突き動かされながら、今日も明日も未知なるヒーローを探し続けます!謎と可能性に満ちた、いまだ未知の分野に惚れました♥微生物資源科学/生態工学生物資源科学部 生物環境科学科WATANABE Miho北海道東部の霧深い漁村に生まれ育つ。山形大学農学部で新奇細菌の世界にハマり、微生物ハンターを志して北海道大学大学院環境科学院進学、修士・博士号(環境科学)を取得。北海道大学低温科学研究所学振PD、筑波大生命環境系研究員、産総研外来研究員を経て現職。趣味は多肉植物栽培とアジア料理。保護猫支援のボランティアを気ままにやってます。博物館や道の駅で売っているTシャツやマグネットをつい買ってしまう癖がある。渡邊 美穂 助教(微生物ハンター)
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