す。また、新型コロナウイルスの世界的規模での蔓延、人間活動 らグローバルへと展開する知の実践の場として優れています。 私が赴任して2年が過ぎました。この間、未来の秋田創造に向けてさまざまな取り組みをしてきました。2023年9月には、10年後の未来を見据えて、新たなビジョンとアクションをセットとした、秋田県立大学ビジョン2033を公 表いたしました(右ページ)。このビジョンに沿って、企業、自治体、県民の皆様と共に、地域の課題解決に努めるとともに、地域から出発し、国際的価値を持つ研究、グローバル人材の育成、世界課題解決のための技術開発を推進しています。また、昨年度から3学科でスタートした、『キャップストーンプロジェクト』は、今年度からシステム科学技術学部の全学科に拡張されます。このプロジェクトは、企業等が抱えているビジネス課題と学生が向き合い、解決に近づくための方法を探るという非常に実践的なものです。学生は社会や企業等の実態と社会的課題を、リアリティーを持って知る良い機会となりますし、企業等は学生をよく知り、さらには学生を鍛える中で、より良い人材を確保できる機会となり、自治体にとっては学生の地域密着型の活動や定着のきっかけなどのメリットがあると考えられます。ですので、企業の皆様には、ぜひ参加していただきたいと考えています。また、これからのグローバル社会においては、中小企業であっても海外企業と交渉するにあたっては、博士人材が必須です。秋田の地元の大学として、企業の皆様と一緒に社会人博士の育成にも積極的に取り組むつもりにしています。 以上、秋田県立大学は未来を見つめながら走り続けますので、今後とも、ご支援とご協力をよろしくお願い申し上げます。【理事長・学長】福田 裕穂 [ふくだ・ひろお]1953年 静岡県浜松市出身。1982年 東京大学大学院理学系研究科博士課程修了(理学博士)。東北大学理学部教授、東京大学理学系研究科教授・理学系研究科長、東京大学理事・副学長、京都先端科学大学バイオ環境学部長を歴任し、2023年4月より現職。 今、世界は大きな転換期を迎えています。これまで、世界はグローバル化が進み、その結果、人々の生活は豊かになり、多くの病気も克服され、安全で幸せな未来が待っていると、楽天的に考えてきました。しかし、この数年の間に、ミャンマーでの軍事クーデター、ロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルによるガザ侵攻などの軍事行動が起き、台湾と中国との緊張は抜き差しならないところまで来ていて、世界は融和から分断へと逆戻りしていまに伴う二酸化炭素濃度の上昇による地球温暖化など、グローバル化に伴う深刻な危機が次々と訪れ、グローバル化の負の側面もまた明らかになったのです。このグローバル化の明と暗が反転するかもしれない転換期において、真に必要なのはローカルとグローバルをしなやかに行き来する“知”であり、その知を身につけ実践する人です。 秋田県立大学は、1999年に創設された新しい大学で、システム科学技術学部・研究科、生物資源科学部・研究科をもち、多数の優れた施設を抱える理系大学です。これまでに「真理探究の精神をもち、広い視野と柔軟な発想のもと、豊かな創造力で、21世紀を切り開いていく人材を育成するとともに、先端的な研究や技術開発を行うことで、秋田県の持続的発展に貢献する」を目標に、グローバルとローカルを共に見据えながら、知の創造と人材育成の実績を積み重ねてきました。その依って立つ秋田県は、自然に恵まれ、広い農地や森林などの資源を有し、電子部品・デバイスなどの未来型産業の発展している地域で、まさにローカルか理事長・学長挨拶秋田県立大学の未来に向けての取り組み
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