秋田大学 大学院理工学研究科 2022
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高分子合成技術の発展でより良い世の中に研究者紹介Lab Interview寺境 光俊 教授大学院理工学研究科物質科学専攻 応用化学コース分子構造の設計が 生み出す、 新たな素材との出会い紙おむつや保冷用ゲル剤、ペットシートなどに使われる「吸水性ポリマー」や、スマートホンや車などに使われている小さなキズが自然に直る塗料、有機ELディスプレイ…これらはすべて高分子合成による機能性有機材料です。有機材料は軽く、様々な形状に加工しやすく、また着色や加工によるデザイン性が高いため、スマートフォン材料やウエラブル端末など生活と密着した分野でより活用されています。意外にも私たちの生活と高分子は密接に関わっていて、切っても切り離せない関係にあるのです。当研究室が行うのは、有機材料化学をテーマに機能を持った有機材料の合成と評価に関する研究です。具体的には、有機合成、高分子合成をベースに電子材料、医療、エネルギーなど様々な分野で役に立つ材料について、分子レベルから設計しています。高分子の設計は、新たな素材との出会いを実現します。例えば、柔らかく伸びるプラスチック素材を作りたい時。素材を硬くする分子と柔らかくする分子を順番に並べると、引っ張った時に途切れずに伸びてくれます。素材は、分子構造が変わると性能が変わるというわけです。さらに私たちは、有機合成や高分子合成を様々な学術分野と連携して研究しています。最近で特に印象深かったのは、医学部との共同研究。伸縮性のある生分解性高分子の研究で、ある構造には血小板が表面に付きにくくなる性質があることを見出しました。生分解性高分子は生体内で吸収されるので、治癒後の生態組織と入れ替われば取り出す必要がなくなるというメリットがあります。一方、血液と接触する界面では異物を入れると血栓ができるため、医療では多量の抗血栓製剤を使用しているのが現状。しかし今回見出した生分解性高分子の特性を生かせば、これまでになかった新しい生体内埋め込み材料を開発できると期待しています。5

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