秋田大学 大学院理工学研究科 2022
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今ある資源を生かし、 高付加価値の有機材料へ有機合成や高分子合成はさまざまな形でアウトプットが可能です。医療や環境、エネルギー…つまり、あらゆる分野をサポートできるという将来性があります。最近注目されている有機材料として、炭素繊維複合材料があります。飛行機や自動車の車体軽量化に使われている材料と言えばピンと来る方も多いのではないでしょうか。車体が軽くなれば燃料が少なくてすみ、環境への負荷を低減することができます。今後はこういった環境にやさしい材料がどんどん広まっていくのではないかと考えています。環境についてのお話しをしたので補足までにお伝えすると、高分子の研究では石油を使います。石油は燃やして利用するのが一般的ですが、私たちにとっては貴重な研究資源。燃やすなんてもったいないのです。今後は、石油のような今ある環境資源を有効活用して付加価値のある有機材料に変えていく、このような環境にとって効率の良いサイクルを推進していきたいと考えます。研究者人生、未知の方法を探る旅私が研究者人生の中で目指すのは、学術的に価値の高い研究を行い、将来教科書に載るような結果を出すことです。分岐高分子の研究を20年以上続けており、1999年には世界で初めて「A2型、B3型モノマーからの多分岐ポリマー合成」について報告しました。この方法は簡便に多分岐ポリマーを合成する方法として世界中で用いられています。これについてはまだ解決すべき問題点が残っているので、現在も研究を重ねている最中です。もう一つは、高分子の合成技術を生かして世の中の役に立つ仕事をすることです。医療分野や環境分野など、様々な分野で役に立つ材料開発を進めています。研究のやりがいは、分子レベルからどのような設計をすれば機能が発現するかを考えるところです。初めて行う反応がうまくいったり、これまでとは違う材料を合成できた時は本当にワクワクします。実際には、想定どおりに反応が進まないこと、思ったほど機能が出ないこと、再現性に問題があるなど、失敗することの方が多いのが現実です。ただ、その失敗から大きな学びを得ることができるのも事実。期待していなかった結果になったときでも、それが大きな発見となり意外な喜びに繋がることが研究の醍醐味なのではないでしょうか。だからこそ学生たちに期待することは、物事を論理立てて考え、解決策や最善策を提案できるようになることです。世の中の問題は明確な答えがないことも多いですが、理系の研究において論理的な思考力を身につけることは非常に大切です。ポジティブな態度で人に頼られるような人材になって欲しいと思います。そして、その有り余る探究心とエネルギーを使い、私たちと一緒に新たな発見を見出しましょう。ABCD大学院理工学研究科物質科学専攻 応用化学コース寺境 光俊 教授1964年東京都生まれ。1988年早稲田大学理工学部応用化学科卒業、1993年同大学院理工学研究科修了博士(工学)取得。東京工業大学工学部有機材料工学科助手、ノースカロライナ大学(米国)博士研究員、東京工業大学付属高校専攻科非常勤講師などを経て、2003年秋田大学工学資源学部環境物質工学科助教授、2008年同教授、2016年に同大学院理工学研究科物質科学専攻教授。ProleA高分子を取り出す作業。研究は地道な実験の繰り返しで、集中力が求められるB応用化学コースは理工学部の中でも女子学生が多く、和やかな雰囲気C寺境教授は分岐高分子の研究に携わり20年以上。 常に新しい合成技術を模索中D蒸留機を使い、純粋な成分を取り出していく作業。実験は失敗も多いが成功した時の喜びはひとしお。6

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