秋田大学 大学院理工学研究科 2022
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人類が克服できない課題に工学で挑む研究者紹介Lab Interview水戸部 一孝 教授大学院理工学研究科数理・電気電子情報学専攻 人間情報工学コースヒトを中心とした IT技術を研究私たちが取り組むのは、ヒトを中心としたIT技術の開発です。「ヒトを調べ、治療し、支援する」ことを目的として、高齢者の交通事故や末期癌患者など、人類が未だ克服できない課題に工学的・医療的視点からアプローチしています。「ヒトを調べる」では、磁気式モーションキャプチャ技術とVRを駆使し、ヒトの細かい動きをデータとして蓄積し活用しています。例えば高齢者事故の工学的分析では、65歳以上の男女を集め、歩行や自転車運転の特徴をシミュレーターで検証。場所や時間帯、季節など様々な条件を加え多様なデータを分析することで、事故に遭いやすい高齢者の行動の特徴を知ることができるようになりました。そのようなデータを元に開発した歩行者の横断事故を検証するシュミレーターを、2007年に県内企業と連携して「わたりジョーズ君」の名前で商品化し、全国の警察や自治体に販売しています。高齢になり運転に危険を感じ始めた方は、例え運転をしていなくても歩行者として事故に遭いやすい側面があります。事故に遭ってしまう時の行動には少なからず特徴があるので、それをデータ化してドライバーに周知することで交通弱者を守ることにつながるのではと期待しています。また、私たちの研究は細かい動きを集中的に記録することを得意としています。そのため、指先などの動きを高精度で記録し、医療や芸術分野に生かすことができるのです。現在は、背骨に穴を開ける外科手術や採血に関わる医療用訓練システム、楽器の演奏を遠隔で受けられる技能教育用のアプリケーションを開発中。技術の習得は対面で学ぶことが一般的ですが、今後はXR(VR・MR・AR)の研究により、細かい技も離れた場所から習得できるようになるでしょう。「ヒトを治療する」という分野では、医学部と連携した研究を進めています。現在は、磁気式ハイパーサーミア技術により悪性腫瘍の進行を遅らせ、末期肺癌患者のQOL向上に役立つ治療法を研究中です。ハイパーサーミアとは温熱療法のこと。一旦患部に発熱体を注射する必要がありますが、その後の治療時には痛みもなく腫瘍部のみを加熱する自動温熱療法システムを開発しています。7

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