秋田大学 大学院理工学研究科 2022
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工学で超高齢化県の 秋田を支えたい研究に取り組むきっかけとなったのは、1996年、助手として秋田大学に赴任したことからでした。元々北海道大学大学院の博士課程でヒトを工学的に調べる生体工学を専攻していたこともあり、秋田県の未来について「いずれ高齢化率が日本一となり、超高齢社会の様々な問題が発生するだろう」と予想したからです。そして、健康を維持するための科学が必要になるだろうと考えました。そこで2002年から1年間、秋田大学で蓄積した高齢者の知覚運動機能の計測技術と経験を武器にアメリカのマサチューセッツ工科大学で自動車シュミレーターの開発に携わり、そこでVRによる高齢者ドライバーの検査手法を学びました。その技術を、現在の高齢歩行者の交通事故防止用検査システムに応用しています。研究は地道で決して楽なものではありません。研究が進む程分からないことが次々と現れるので、当初の予想や計画通りに進まないことが最大の難点でしょう。一方、一見失敗と思える想定外の結果でも発想を転換して新たな着想を得たり、新たな発明に繋がる契機となったりするところが面白く、やりがいを感じています。テクノロジーが普及する 未来を共に創ろう!近年、空間を超越するテクノロジーが普及してきました。例えば、アパートに居ながら先生の採血手技を顕微鏡レベルの立体映像で学ぶことができたり、アパートの床にバーチャルなブロックを積み上げながら立体映像の友人達と一緒に橋梁設計の課題に取り組んだり、医師が遠方に住むパーキンソン病患者の立体映像で運動症状を診断したりすることなどは、既に実現されています。10年後、私たちの暮らしは、旅行や食事は現実世界で楽しみ、仕事や勉強はサイバースペースを活用するというように変化しているかもしれません。地方で暮らしながら世界各国の人達とサイバースペースの職場で協働する時代を想像すると、ワクワクしてきませんか?人生をロールプレイングゲームに例えると、大学は外の世界で戦う前の訓練の場で、経験値を稼ぎレベルアップするための場です。宿屋で時間を過ごしてもただお金がかかるだけで、あなたの経験値は上がりません。秋田大学理工学研究科には、皆さんのレベルアップに役立つ「レアアイテム(貴重な研究設備)」や「モンスター(教授陣)」が揃っていますので、限られた在籍時間で精一杯挑戦し、戦って(考えて)みてください。その結果あなたは究極の剣を手に、そして秋田大学の卒業生であることを誇りに、目を輝かせて社会に旅立てることでしょう。ABCDA医学部と共同で、背骨に穴を開ける外科手術に関わる医療訓練システムを開発中B自転車運転シミュレーターで事故に遭いやすい行動を調査。様々なシチュエーションでのデータを集めるC「大学の研究は学生との共同作業」と話す水戸部教授。学生の研究を丁寧にサポートDロボットアームを使い、磁気式ハイパーサーミア技術を研究。末期がん患者のQOL向上を図る大学院理工学研究科  数理・電気電子情報学専攻  人間情報工学コース水戸部 一孝 教授1967年北海道生まれ。1991年に秋田大学鉱山学部電気工学科を卒業、1996年に北海道大学大学院工学研究科生体工学専攻博士課程修了。博士(工学)。2013年に秋田大学工学資源学部情報工学科教授、2016年から現職。IEEE、VR学会、日本生体医工学会、電気学会、電子情報通信学会、静電気学会、日本交通科学協議会および日本素材物性学会各会員。Prole8

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