秋田大学 理工学部 2022
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Faculty of Engineering Science Akita University04 基礎情報学や基礎AI学では,コンピュータでのデータ表現から計算アルゴリズム,基礎的な統計解析プログラム,データの可視化プログラム,さらには,ニューラルネットワーク(NN)の基本的仕組みから機械学習プログラムまでを学びます。これらの情報技術に関する基礎知識は,さまざまな理工学分野の研究で応用されています。 私たちの研究室では,「観光分野に関するデータの収集・解析」をテーマに研究を行っています。観光施設における従来の来場者アンケート調査では,来場者の多くが回答しないため,回答者の性別や年齢が偏ることが問題となっていました。そこで,来場者がどんなモノに「視線を向けるのか」を定量的に解析することで,無意識に注目している部分を客観的に評価する仕組みを検討しています。現在は,美術館や博物館など広い空間を自由に動き回る不特定多数の閲覧者の視線計測に着目し,カメラ画像を用いて顔の向きから視線方向を推測する「ヘッドトラッキング」を利用した調査システムの開発を行っています。ヘッドトラッキングは,事前に用意している顔3Dモデルとカメラ画像に映った顔の特徴点から頭部姿勢を計算し,鼻頂点の方向を視線の方向ベクトルと捉え,観測平面との交点を求め,注視領域を推定します。その計測精度は眼球方向を計測する「アイトラッキング」より低くなりますが,不特定多数の視線計測には有効な技術です。 このシステムの開発言語は講義で学ぶPythonを使用していて,先に説明した基礎的プログラムを,計測装置からのデータ入力,注視点の座標計算,注視点と観測平面とのマッピング,注視領域の推定・可視化などの処理で応用しています。また,注視領域推定には顔特徴点の個人差による誤差が生じる可能性があるため,NNによる機械学習を応用した推定アルゴリズムの検討も進めています。開発システムは,不特定多数の注視領域を実時間で解析可能ヒトの「視線」を解析して、ヒトの「興味」を推定する数理・電気電子情報学科 人間情報工学コース髙橋 秋典 助教 コンピューターやスマートフォンで色々なことができることは、現代に住んでいる誰もが良くわかっていることでしょう。しかし、コンピューターやスマートフォンの内部がどのようになっていて、どのように情報を処理して動作しているか、その「仕組み」を知っている人は多くはないと思われます。 私の専門はコンピューターがどのような「仕組み」で問題を解いているのか、特に、「計算機で効率よく、かつ"厳密"に解ける問題」を明らかにするオートマトン理論と呼ばれる分野で研究を行っています。 問題には色々な種類があり、 大雑把に (1) 計算機で効率よく解ける問題 (2) 計算機で解けるが非常に時間のかかる問題 (3) 計算機では原理的に解けない問題などの問題があります。 基礎AI学で学ぶニューラルネットワークは、(2)--(3)型のような問題を(ある程度厳密さを捨てて)解くのに非常に有用な技術である一方、オートマトンは(1)型やいくつかの(2)型の問題を数学的に解析する有用な道具となっています。大きく異る両者ですが,実は脳の神経細胞(ニューロン)の電気信号のやり取りをモデル化した「形式的ニューロン」と呼ばれるものが源流となっています。 ニューラルネットワークは様々な問題に対して有効であることが知られていますが、ニューラルネットワークが「なぜ上手く計算を行うのか?」という点は明らかになってない部分が多いです。近年では、どのように計算を行っているのか「仕組み」がわかりにくいニューラルネットワークから、振る舞いの似たより単純かつ「仕組み」がわかりやすい計算モデル(例えばオートマトン)を抽出する研究が盛んに行われています。 ニューラルネットとは少し異なりますが、私の最近の研究成果から(2)--(3)型の色々な問題がオートマトンである意味効率良く「近似」できることが明らかになっており、今は「どのような問題がオートマトンで効率よく「近似」できるのか」を理論的に明らかにするために研究を進めています。計算機で解ける問題・解けない問題の境界を数理科学で明らかにする数理・電気電子情報学科 数理科学コース新屋 良磨 助教理工学部の魅力「超スマート社会の情報技術人財育成プログラム」の応用研究

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