秋田大学大学院 理工学研究科 2023
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9新型コロナウイルスが猛威をふるったこの数年で、私たちの生活は大きく変わりました。「早くワクチンを打ちたい」「ワクチンを打って無敵になりたい!」そう感じた方も多いのではないでしょうか。実際には無敵は不可能ですが、ワクチンを効きやすくすることは現実味がありそうです。私たちは、主に細胞工学と免疫学、抗体工学の分野で免疫細胞に焦点を当てた研究を行っています。具体的には、免疫細胞がどのような仕組みで私たちの身体を病気から守ってくれているのかという研究で、新型コロナウイルスをはじめとするワクチンの開発や、ワクチンの効果向上などを目指しています。そして、これらの研究に欠かせないのが、私たちのメインテーマである「B細胞の働く仕組み」です。B細胞はリンパ球の一種であり、抗体を作れる唯一の免疫細胞です。そのB細胞の働きを人為的に制御できるようになることが、今目指しているところです。B細胞には「記憶応答」という働きがあり、この作用がワクチンの効果に大きく関係しています。具体的には、一度体内に入ったウイルスを記憶し、再びそのウイルスが入り込んだ時に攻撃する働きのことを言います。ワクチンの場合は、初回接種時にB細胞が分化した記憶B細胞が生成され、それが維持されることで予防効果を発揮しているのです。ところが、B細胞がどのような分子メカニズムで記憶B細胞へと分化し性質を変えるのかということに関しては、まだ不明点が多く残されています。そこで記憶応答の仕組みを解明し、今後人為的に操作ができるようになれば、ワクチンの開発も格段にスピードアップするでしょう。そして、よりワクチンを効きやすくするための働きかけができるようになり、ひいては感染症の拡が大学院理工学研究科物質科学専攻 応用化学コース免疫系の神秘に迫り 人類の未来を守り抜く寺境 光俊 教授研究者紹介医療と薬学の基盤を 理工学的側面から開拓する

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