秋田大学 CAMPUS GUIDE BOOK 2023
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多彩な研究を行う秋田大学の研究者について、秋田大学ホームページに掲載のインタビュー記事から一部を抜粋して紹介します。  今でこそタジキスタンは平穏を取り戻していますが、地域間の格差は解消されていません。石油や天然ガスに恵まれないタジキスタンでは、地方では電力供給が一日に2時間程度に限られるなど、エネルギー供給が不十分な地域があるのが現状です。地域間格差を緩和し、産業化を進め経済発展を遂げるには、電力の安定供給が不可欠です。そのために稲垣教授は、エネルギーインフラ再構築への日本を含む国際社会の支援やCO2排出量が少ない電力供給システムの在り方など、多くの課題を解決する糸口を探しながら今日も研究を続けています。ります。これまでの実験から、運動中には心臓から送り出される血液量や血管内での血液の流れやすさなどに大きな個人差が生まれていることや、筋肉での代謝で作り出される物質にかかわる反射メカニズムが個人差発生の一因となっていることなどが明らかになったそうです。今後このテーマに関する研究を積み重ね、「なぜ、運動の効果に大きな個人差が生まれるのか」という問いの答えにたどり着くよう研究を進めたいと渡邊准教授は言います。 渡邊准教授は今後もスポーツやからだに興味を持つ学生とともに、新たな発見をもとめて未知への挑戦を続けていくことでしょう。 被害者の回復プロセスは被害の程度、加害者との関係性、被害を受けたあとのサポート等によって変わってきます。米山教授は秋田県内の相談窓口相談員のスーパーバイズを行っています。相談員はヘビーでショッキングな相談を重ねると、疲弊してしまうことがよくあるそうです。相談員をサポートし、エンパワーメントしていきたいと米山教授は考えています。 傷ついた人々が自ら回復していくことを安全に、安心のもとで支援できるように、米山教授は日本におけるフォレンジック看護の発展のために力を尽くします。に対する危険性を1箇所ずつ判定するシステムを研究しています。一時的な集中豪雨や長雨の場合でも,雨量に応じてそれぞれののり面が崩壊する危険性がどのくらいなのかがわかります。境界線を越えるとそれがいち早く示されるので、崩壊事故を未然に防ぐことができるのです。 土木工学は社会インフラを守るという生活に役立つ最前線に身を置いているといっても過言ではありません。「知識の詰め込みだけでは終わらないという意識を持って授業をしているのでワクワクするような研究をしたいという方はぜひ土木工学を選んで欲しいと思います。」詳細はこちらから▲25タジキスタン内戦から国と国の関係を紐解く 大学院国際資源学研究科 資源開発環境コース 教授 稲垣文昭 稲垣教授は、国際関係論と政治学の観点から1992~2000年に内戦に陥ったタジキスタンの研究をしています。稲垣教授は「タジキスタンの人々は、本来とても優しい性格の方が多いのになぜ内戦を起こしたのか興味をもった」と話し、「人が人を統べる」とはどういうことなのかを知るために研究をしています。 タジキスタンではソ連末期の経済的混乱によって地域間の格差を生み出しました。もともとタジキスタンでは、アイデンティティが地域ごとに形成されていたため、格差により地域間の対立が深まり内戦が起きました。運動によって起こるヒトの生体反応の謎に迫る 教育文化学部 学校教育課程 教育実践講座 准教授 渡邊和仁 渡邊准教授は自身のスポーツ経験を通して運動によるからだの変化に強く興味を持つようになったそうです。運動中はからだの様々な機能が活性化し、巧みに協調し合って働くことにより、運動を長時間続けたり、激しい運動を行ったりすることが可能となります。未だ科学的に説明できないことも多い運動中の現象や仕組みの謎を紐解き、アスリート・指導者の活動を支える知見や、日々の健康に役立つ情報を広く発信することを目標としながら渡邊准教授は研究に取り組んでいます。 同じ運動を同じ強度・時間・頻度で行っても効果には個人差があ新型コロナウイルス感染症の重症化、後遺症発症メカニズムの解明 大学院医学系研究科 医学専攻 分子機能学・代謝機能学講座 教授 久場敬司るといいます。 久場教授は2002年からACE2という血液を上昇させる作用を持 COVID-19に感染すると、重症化の過程で全身の炎症が進み、つアンジオテンシンⅡというホルモンを分解し、血圧を降下させる働血栓ができたり、血管炎を発症したりすることがあります。こういっきをする酵素の研究をしてきました。そしてこのACE2の酵素活た炎症の悪化にはブラディキニンというペプチドも関係しているこ性がSARSの重症化や重度の肺炎、心不全を抑えることが、久場教とがわかってきており、久場教授の研究ではCOVID-19について授の研究によって明らかにされました。は悪玉のアンジオテンシンⅡやブラディキニンや未知のペプチドを ウイルスが体内に入るとウイルスの表面のスパイク蛋白が細胞分解するACE2の酵素活性が大きく関わっているのだそうです。表面にあるACE2受容体と結合することで感染します。最初は身 現在、COVID-19の重症化や後遺症発症のメカニズムは十分に体がウイルスを排除しようとしますが、ウイルスが細胞に侵され、増解明されていません。「Withコロナ、postコロナに向けてこの問題殖していきます。それによって正常な肺の細胞が破壊され炎症がを解明していくことが我々研究者の使命と考えています」おきると肺炎になり、SARSもCOVID-19もこの流れで感染が起こ日本におけるフォレンジック看護の発展のために 大学院医学系研究科 保健学専攻 看護学講座 教授 米山奈奈子 米山教授は保健師活動の経験から、アディクション(アルコールやギャンブル等への依存)やDV・虐待といった暴力や性暴力の問題に焦点を当て、被害者の回復支援および当事者を支援する支援者のサポート・ケアを目指した、法的な問題を含む「フォレンジック看護」という新しい看護領域における研究をすすめています。 性暴力被害者が抱える症状は、医療関係者にさえも十分に理解されていない現状があります。被害を受けた方へのケアで重要となるのは、急性期の場合は証拠の採取と身体の傷のケアで、慢性期の場合は、被害者の6割以上が発症するPTSDのケアが非常に重要です。社会インフラを守る最前線の地盤工学と自然災害に対する意識改革の必要性 大学院理工学研究科 システムデザイン工学専攻 土木環境工学コース 准教授 荻野俊寛 荻野准教授は、地盤工学を通して、豪雨による斜面崩壊、土石流、地すべりの発生による被害を未然に防ぐ研究をしています。高速道路等の建設の際、傾斜地や山などの斜面を削り取った切土地盤は、土砂を取り除いたことで不安定化することが多く、道路に沿った斜面は、しばしば削った後も対策を取らなければなりません。反対に斜面を平らにするために土や砂を盛った盛土地盤は、柔らかく、十分に締固めをしなければ地震や豪雨で変形したり、盛土そのものが崩れてしまったりするといいます。 荻野准教授は人工知能AIを駆使して、切土や盛土のり面の豪雨

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