愛媛大学広報誌 ドット・イーフォリオ vol.16
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|先生の研究の内容について、 教えていただけますでしょうか。 農村計画学研究室は、農村空間を対象に農業生産性の向上や地域活性化を目的とした土地利用や土地改良の計画、自然との共生に配慮した農村の空間デザインを研究しています。利水や道路などのインフラ整備だけではなく、高齢化・後継者不足などに対応した農村のありかたを土木の観点から探求しています。なかでも8年前から取り組み、昨年論文としてまとめたのが、「生息地の分断・孤立化による野生動物被害対策効果」。松山市の中島をフィールドに、イノシシの生息地を分断するための柵を効果的に設置し、継続的にモニタリング。捕獲との相乗効果で、イノシシ 「農は国の本」という言葉がありますによる被害の低下に結びつけました。同様の悩みを持つ農村に応用する仕組みづくりにも取り組んでいます。|農村の空間デザインは どのような社会的意義がありますか。が、農業は人の命を守り、国土を守るための要。農学部には留学生も多く学んでいますが、特にアジアでは安定した食料生産により、貧困の解決も叶えます。また国内では農作業中の事故で生命を奪われる方がいます。その対策を継続させるのが農村デザインの役目。たとえばイノシシを捕獲するのが対処療法なら、柵による分断・孤立化は根本から解決する原因療法。継続的に効果が得られる点もメリットとなっています。|愛媛大学農学部の特徴や 地域との関わりを教えてください。 昨今、他大学の農学部がミニマムになっているのに対して、愛媛大学農学部は自然科学だけではなく社会科学も含んでおり、教育・研究のフィールドが非常に多岐にわたっています。教員同士の連携も密に行われており、共同研究も活発。こうした環境は、学生と教員の深いメリットにつながっています。 加えてフィールドワークでは、地域の方からの期待や協力が、大きな力。「地域の方が一緒に学生を育ててくださっている」ということを実感することも多いですね。一方で学生に対しては、社会人としてのマナーや主体性をしっかり身につけてもらえるよう心がけています。大学時代には真摯に座学にも向き合って、学び続けるこれからの長い人生の土台を築いて欲しいと願っています。full of live information on Ehime University野生動物観察用のカメラを設置。棚田で農家の方に教えていただきながら稲刈りを学ぶ。農学部 生物環境学科地域環境工学コース4年生古川 なつ実さん大学院農学研究科 生物環境学専攻 私は卒業研究、修士研究ともに獣害対策に関する研究をしています。何度も現場に出向き、実際に現場を見て、地域の方の話を聞く中で、「現場を知ること」の大切さを学びました。現場主義の重要性を胸に、修了後は国家公務員として日本の農村振興に貢献したいと考えています。10愛媛大学 大学院農学研究科生物環境学専攻農村計画学研究室 教授[プロフィール]徳島県出身。1996年京都大学農学部農業工学科卒業、京都大学大学院農学研究科地域環境科学専攻修士・博士課程、ミュンヘン工科大学等を経て、2003年愛媛大学農学部に助手として着任。助教、准教授を経て2017年より現職。愛媛大学人権センター副センター長を兼務。息抜きは子どもと過ごす時間。たけやま修士課程1年生吉元 淳記さんえみ特集「Zooming up」 私は研究に関する調査で、地域の農家の方に、豪雨の被災状況や、柑橘栽培にかける想いを直接伺う機会に恵まれました。その中で、農業土木分野が農家の方の人生に大きく関わることを改めて実感しました。 将来、現場を大切にし、地域の方に寄り添った設計ができる技術士を目指します。農業土木の重要性について実感した卒業研究現場を知ることの重要性武山 絵美07

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