愛媛大学広報誌 ドット・イーフォリオ vol.16
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|先生の研究テーマについて 大まかにご説明ください。 私の研究テーマは、大戦間期(1919〜1939年)のオーストリアのナショナリズム。この時代、オーストリアは非常に特殊な状況にありました。他の新生国家が独立への気概を持っていたのに対して、独立ではなく、むしろドイツとの統合を求めていました。その理由は、第一次世界大戦後に大帝国が解体し、生存も疑わしい小国となった自国に誇りを持てなかったこと。またドイツ語を使う自分たちが「ドイツ人」ではなく、「オーストリア人である」という意識を持ちづらい状況にあったことでした。そこからどのようにして民族意識が形成されていったのかを探り、現代の「実験」をすることはできません。研究社会問題でもある移民などの「人の移動」へと領域を広げています。|教育において、学生たちに 心得てほしいことはありますか。 教育では歴史政治学や国家論を担っていますが、他の分野のようににおいては残された文献や史料をもとに考察し、仮説を立て、それを証明する新たな史料を発掘するという非常に地味な作業の積み重ねとなります。だからと言ってデスクワークだけに終始するわけではありません。やはり歴史の現場に足を運ぶことが非常に重要。各地の公文書館で記録を発掘するのもその一つ。またその地の空気を肌で感じ、現地の方と直に触れ合うことで国民性を知ることも大切です。歴史は現代に通じていますから、現代的な感覚を磨くことも学生に求めています。|今を生きる学生たちに 伝えたいことはありますか。 私の学生時代と比べて、海外渡航のハードルは下がっています。学生にも海外に行くチャンスは増えてきました。またインターネットの普及により、海外の史料や文献も容易に手に入ります。便利ではありますが、事前準備にしても、求められる成果にしても一層大きくなっています。例えば情報検索をするにしても、テクニックが必要。またそうやって得たデータはあくまでも他人の成果なので、自分ならではの考察をしていくためには、アナログ的に足で稼ぐ取組が必要なのです。コロナ禍で海外渡航は難しい時期ですが、いつかは状況が変わります。学生には研究の「武器」としての外国語の勉強をしてほしいと願っています。full of live information on Ehime Universityチェルニフツィ(現ウクライナ)。ウィーンからバスで丸1日。旧オーストリアの大きさを実感。法文学部 人文社会学科グローバル・スタディーズ履修コース3年生岡田 侑里子さん梶原教授執筆の調査報告や著書の数々。4愛媛大学 法文学部人文社会学科 教授[プロフィール]福岡県出身、大分県育ち。1995年愛媛大学法文学部法学科卒業、2004年京都大学大学院法学研究科博士後期課程研究指導認定退学。京都大学大学院法学研究科助手を経て、2009年より愛媛大学教員。愛媛大学法文学部総合政策学科講師・准教授、ロンドン大学ゴールドスミス校バルカン諸国研究センター客員研究員を経て、2019年より現職。趣味は自転車。かじわらかつひこ特集「Zooming up」 1年生の時にレポートやメールの書き方など、大学だけでなく様々な場面で必要となる知識を学べる授業がたくさんあり、今でもゼミの中でさらに細かく指導していただいています。学外でも、また卒業しても今学んでいることを実践して、いつでも社会に通用する自分でありたいと考えています。法文学部で、社会に通用する自分になる梶原 克彦01

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