│シリーズ│「小学校の先生になりたい」という夢を抱き、教育学部小学校教員養成課程へと進んだ諸田龍美先生。ところが文学に深入りし、中国文学の研究者となりました。教育者としては、学生はもちろんリカレント教育への貢献にも力を尽くしたいと考えている諸田先生の人となりをご紹介します。|先生が漢文学に興味を持った きっかけは何ですか?|それほどまでに漢文学に惹かれた 理由とは何なのでしょう。 学部時代は小学校の国語教師を目指していたのですが、卒論の研究テーマの『源氏物語』に魅かれて修士課程に進学しました。そこで日本語や日本文学の大本には中国古典文化があることを再認識し、深みにはまってしまいました(笑)。いったん地元である静岡県の高校で講師もしたのですが、やはり白楽天をじっくり研究したいと、九州大学の修士課程、博士課程で学びを深めました。博士課程の途中で南京大学への1年間の留学も経験しています。大学助手の仕事に就いたのは30歳を超えてから。人に比べたら遅まきの社会人生活のスタートになってしまいました。 1968年、ノーベル文学賞を受賞した川端康成は記念講演「美しい日本の私」で、白楽天の漢詩の言葉「雪月花」を引用しました。日本人の美意識や死生観などは、こうした漢文学の影響が大きく、物事の本質を突き詰めたいと考えた時、答えはそこにあるのではないかと考えたからです。文学を知るということは世の中を知ることに通じます。日本語から日本の古典文学、そして中国の古典文学へ。研究を通して、エッセンシャルな本質の探究をしていきたいですね。 私たち文系の研究者にとって、執筆や社会人講座は、研究成果を社会へと還元できる絶好の機会。というのも文学は年齢を重ね、人生の経験を積み上げれば積み上げるほど、深みのある解釈ができると思っています。拙著や講座を通して、敬遠しがちな漢文学に触れる機会を提供すること、そしてそれにより人生を有意義なものにしていただくことを望んでいます。今年は愛媛新聞のコラム「四季録」を週一回担当していますが、購読者の方からいただく意見や感想はとても励みになっています。 『礼記―大学』の一節に「修身斉家治国平天下」という言葉があります。自分の心を正すことが天下の平和に繋がるといった意味ですが、どんな大事も自分自身からということ。これからも、文学を通して、豊かな考え方や生き方を学び実践する大切さを、多くの方にお伝えできればと思います。|多忙な時間を縫って書籍執筆など 多様な活動をする理由は。しゅう しん せい か ち こく へい てん か教授 諸田 龍美愛媛大学 法文学部◎プロフィール ─静岡県島田市川根町出身。静岡大学教育学部小学校教員養成課程国語科卒業、静岡大学大学院教育学研究科修士課程を満期退学。九州大学大学院文学研究科中国学専攻修士課程修了、同博士課程満期退学(1995年から約1年間は中国政府奨学金留学生として南京大学に留学)。1999年に愛媛大学法文学部に講師として着任、助教授を経て現在は教授。著書に『中国詩人烈伝 人生のヒントをくれる型破りな10賢人(淡交社刊)』、『漢詩酔談(大修館書店刊・串田久治氏との共著)』など多数。14留学生に茶をたて、日中の文化交流について話す。茶道は文学研究の実践だと考えます。鑑真和上の言葉「(山川異域)風月同天」の掛軸。書は唐招提寺84世長老の益田快範氏。愛媛大学 『知のひろば』修身斉家治国平天下。心の豊かさがすべての基本に
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