愛媛大学広報誌 ドット・イーフォリオ vol.17
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先進的な超高圧科学研究の総合的な推進をNETUTE 2 7「先進超高圧科学研究拠点(PRIUS)」と 地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)は、愛媛大学の特徴ある先端研究を担うセンターとして2001年に設立され、地球深部科学の分野における活発な先端的研究をすすめてきました。この間、教育においても我が国の地球科学分野における3つのグローバルCOE拠点の一つ(地球深部物質学拠点)に選出され、若手研究者の育成においても大きな成果をあげてきました。 そのような活動の中、GRCは2013年にして文部科学省の共同利用・共同研究拠点に認定されました。西原遊拠点長は「当拠点には世界の研究者を惹きつける3つの要素があります」と話します。第1は実験装置。超高圧発生装置ORANGEや、大容量超高圧合成装置BOTCHAN、超高圧変形装置MADONNAⅠ・Ⅱなど、世界屈指の超高圧装置群が揃っています。第2に分析装置。実験で物質を生成した後、それがどのような性質を持っているのかを調べるための分析装置が必要ですが、GRCには走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡、微小領域X線回折装置などの多様な分析に対応する装置群を備えています。第3は数値シミュレーション技術。これは計算機を使って地球の中の物質を再現したり、地球スケールで物質がどう振る舞っているのかを調べたりする技術です。「2001年のGRC発足以来の技術の蓄積があり、これを活用したいという国内外の研究者のニーズは非常に高いものとなっています」と西原拠点長。国内外からPRIUSに寄せられる共同利用・共同研究の応募は毎年約100件あり、利用者がGRCの設備を直接利用する共同利用や、GRCの特殊な技術等を利用した共同研究など内容は様々。中でも特徴的なのはGRCで合成した世界最硬のナノ多結晶ダイヤモンド(ヒメダイヤ)を利用した共同研究。ヒメダイヤの特殊な性質を利用した研究は幅広く、海外からの要望も多くあります。また、昨年度には共同利用・共同研究拠点の期末評価があり、PRIUSは最高評価のS評価を受けました。比較的小規模な研究施設ながら世界的にも他の追随を許さない独自の優れた研究設備と技術を基盤とした国際的な共同研究の実績や、研究教育の国際化、関連コミュニティへの貢献などが高く評価されました。 共同利用・共同研究拠点認定以来、毎年開催されているのがPRIUSの成果報告会を兼ねた「PRIUSシンポジウム」。コロナ禍にあった2022年3月はオンライン方式を採用し、より多くの参加がありました。小惑星や隕石などの地球外物質に関する研究を中心としたプログラムで、全体で13件の講演がありました。「こうしたシンポジウムは、PRIUSに興味を持っている研究者にその魅力を知っていただく好機になっています。また学生たちも参加可能なので、愛媛大学の学生たちが最先端の研究に触れることができます」と西原拠点長。 また、以前より国内外の研究者との交流が活発だったGRC。海外からの短期・長期滞在の研究者も多く、学生たちは日常的に英語に接する機会があります。「私たち研究者は成果を英語の論文にまとめて発表しますが、学生にとってこの環境が英語を使った発信力を伸ばす一助になるでしょうね。異文化と接することも成長につながると考えています」。 地球深部に関わる研究で、常に海外からも注目を集めてきたGRC。共同利用・共同研究拠点として歩み始めてからは、そこに新たな可能性も生まれています。というのも世界中の研究者たちから寄せられる共同研究の中には、これまでのGRCの専門外の分野もあるためです。「GRCは今後、材料科学、惑星深部科学、動的地球科学といった分野へ研究を展開することを目指していますが、他分野との共同研究の経験も今後の研究の方向性に影響を与えています。研究の範囲を広げることができるだけではなく、そこから得られた知見を地球深部に関わる研究へとフィードバックできるというメリットも生まれます」と西原拠点長は期待しています。 多様な研究成果を生み出し、未来の研究者の育成にも貢献しているPRIUS。その存在は愛媛大学の名を世界に知らしめることにつながっています。FOTIICEC-PRESSURE SR ULTAHIGH PREMIER R研究者を惹きつける3つのポイント愛媛大学の学生たちに共同研究がもたらすメリット材料科学や惑星深部科学動的地球科学分野への広がりもESEARCH INS愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター共同利用・共同研究拠点先進超高圧科学研究拠点PRIUS −プリウス−

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