7愛媛大学医学部看護学科長薬師神 裕子新型コロナウイルス感染症もようやく終息を迎え、新たな感染症の予防などに対する健康課題に向き合うための方策が必要になってきました。また、我が国の人口は12年連続で減少しており、超少子超高齢化がますます進んでいます。今後、地域における子育て支援、在宅医療や訪問看護の必要性、そして、新たな感染症の予防対策などへの需要がさらに高まる中、看護職は医療・保健・福祉をつなぐ地域包括ケアシステムの中で、中心的な役割を担い活躍することが求められています。本校では、2021年度に始まった新カリキュラムから、入学後の早期から地域に足を運び、住み慣れた安心・安全な場所で暮らす人々の生活について、五感を使って感じる「暮らしの体験演習・実習」を取り入れています。この演習・実習は、子どもから高齢者までのあらゆる年代にある人の物の見方や感じ方を、生活者の視点から理解し、地域包括ケアシステムの基盤を学ぶ大切な科目となっています。一方で、医療の高度化とともに、医療依存度が高く複数の疾病を有する患者に対し、様々な知識を統合して高度な看護技術を提供する看護にも重点をおいています。保健・医療分野においても、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の活用が飛躍的に進み、ITテクノロジーやAIを活用した看護のイノベーションが進んでいます。本校でも、高度化する医療に対応できる看護職を養成するために、シミュレーターやVRなどのデジタルツールを活用して、実践的な知識と高度な技術を身につけられるシミュレーション教育にも取り組んでいます。しかし、どんなに医療が高度化しデジタル機器やA Iの導入が進んだとしても、人を理解し手のぬくもりを提供する看護の本質は変わりません。これまでも、そして、これからも看護に重要なことは、「人と対話する力 “Dialogue” 」です。対話をとおして相手が必要としているケアを行う実践力と、多職種からなる医療チームとの対話を重視する姿勢が看護職には求められています。愛媛大学医学部看護学科では、自分の考えを言語化し意見を述べる発信力、相手に関心を寄せ他者の痛みを理解できる共感力、ひとつの見方や価値観にとらわれない想像力、そして、自己と向き合い看護者としての自分の役割を発見する省察力を4年間で育んでいきます。卒業生は、看護師、保健師、助産師、養護教諭、大学教員として、臨床/教育/研究の場で活躍しており、2024年に看護学科は開学30周年を迎えます。在校生と一緒に、これからの時代に即した新しい看護のかたちを、一緒に創造していきましょう。Message学科長と学生の声人と対話する力 “Dialogue”を育む地域で暮らす人から学び、
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