愛媛大学 ガイドブック 2024
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研究成果ストックサイト1950年以降の人為撹乱による地球環境変化は、長い地球史から見ても、著しく大きな規模の一つです。人類がもたらした近年の大規模な地球環境変化の事実から、完新世から人新世という新たな地質時代に移行したという「人新世の到来」が提唱されるようになりました。人新世は、地質学的用語として広く使われるようになりましたが、科学的に定義された用語ではありません。愛媛大学沿岸環境科学研究センターの加 三千宣准教授を中心とする研究チームは、大分県別府湾の海底堆積物に様々な人新世の始まりを示す痕跡を発見し、深度約60cmの地層面が、人新世の始まりを定義する国際境界標準模式層断面とそのポイント(GSSP)の候補として提案しています。地球史の一時代として人新世が誕生するのも間近にせまってきました。本研究では、今まで不明だった深さ400〜600 kmで発生する「深発地震」の発生原因の解明につながる実験に成功しました。深発地震が発生する地下条件に相当する高温高圧下での地震発生モデル実験により、特定の温度(850℃周辺)のみにおいてカンラン石のナノ粒子化が進行し、このナノ粒子層への変形エネルギーの集中と部分的溶融が起きる結果、深発地震に至ることを明らかにしました。本研究の結果は、長年謎に包まれていた深発地震の発生原因の有力な説明であるとともに、深発地震の発生がプレート深部の特定の場所(「準安定カンラン石ウェッジ」と呼ばれる領域の表面付近)に限定されることを意味しています。今後、深発地震発生の場所・頻度・規模などをモデル化するための手掛かりが得られるものと期待されます。プロテオサイエンスセンター(Proteo-Science Center(PROS))は、愛媛大学で開発されたコムギ無細胞タンパク質合成技術を基盤として、タンパク質機能から生命現象の解明を目指した基礎的な生命科学研究のみならず、薬の副作用解析やがん、自己免疫病、マラリアなどの難治性感染症など医学応用研究をしているセンターです。例として、2万種類以上のヒトタンパク質を合成したヒトプロテインアレイを構築し、サリドマイドの副作用機構の解明や、マラリア原虫のプロテインアレイを用いた非常に有力なマラリアワクチン候補を見出すことに成功しました。愛媛大学公式ホームページの「最先端研究紹介 infinity」、「研究成果ストックサイト」では、他にも様々な研究を紹介していますので、ぜひご覧ください。サリドマイドの副作用である催奇性機構のモデル共同利用・共同研究拠点(※)として認定されている沿岸環境科学研究センター、地球深部ダイナミクス研究センター、プロテオサイエンスセンターの研究を紹介します。愛媛大学も多くの研究センターを有しており、中には世界最先端レベルの研究を行うセンターや地域に密着したセンターもあります。学生のうちから、これらのセンターでの研究に関わることができます。最先端研究 infinityマラリア原虫タンパク質PfRipr5への抗体は、ヒトSEMA7Aとの相互作用を阻害することでマラリア原虫の赤血球侵入を阻止する。19 Ehime University Guide Book最先端研究紹介地質時代としての人新世の誕生(沿岸環境科学研究センター)深発地震発生の新しいメカニズムを提案(地球深部ダイナミクス研究センター)薬剤開発を促進するPROSのタンパク質合成・解析技術(プロテオサイエンスセンター)研究センター大学には、研究を行うための人員や設備を集めた「研究センター」があります。010203

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