福井県立大学広報誌 FPU NEWS 第119号 2023 夏号
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 日本の食料自給率は38%と非常に低い水準です。こうした中、ロシアのウクライナ侵攻による穀物輸出量の激減や世界的な人口増加等による食料需要の拡大、気候変動による生産減少などにより、世界的な食料不足と食料価格の高騰を招いており、私達の日々の生活を脅かしています。 そこで、福井県立大学ではこれまでの研究実績を基に、輸入に頼っている食料を県産化するプロジェクトを立ち上げました。様々な食料の県産化に向けた研究開発を進め、「ふくい」で生まれた品種を「ふくい」の技術で生産することで、日本の食料安全保障と福井県の持続的な発展につなげることを目指します。 現在、我が国の水産養殖は魚粉中心の飼料を与える「魚で魚を作る養殖」が主体です。しかし、世界的な養殖魚の需要拡大により魚粉の価格は高騰しており、安定的な魚粉の入手が難しくなる懸念があります。また、SDGsの観点から魚以外のものを与えて魚を作ることが重要かと思われます。 そこで、魚紛の代替タンパク質原料として、アメリカミズアブの粉末を配合した飼料の開発を進めています。マサバで飼育試験を行ったところ、魚粉の50%をアメリカミズアブに代替した飼料を与えてもマサバの成長が良く、脂ののりも増加することが分かりました。生産が容易な昆虫活用飼料の開発を進め、福井発の持続可能な水産養殖を目指します。昆虫活用飼料水産飼料用魚粉自給率32%養殖場のふくいサーモン小浜はるかぜカキ(仮称)イメージキャラクター食用魚介類自給率59%サーモンIoTを活用したスマート養殖自給率約20%先端増養殖科学科 富永 修 特命教授 海面での魚類養殖は、飼料代が生産経費の60〜70%を占めています。一方、給餌量は勘と経験に依存する部分が大きく、残餌の発生が生産コストの増大と養殖場の汚染につながっています。 そこで、食欲の時間変化をモデル化して、適切に自動給餌するシステムの開発を目指しています。本技術は、特別な機器を追加する必要がなく、給餌スケジュールのプログラミングで対応できるため、短期間での実用化が期待できます。地域で完結する新規カキ養殖技術の開発先端増養殖科学科濵口 昌巳 教授 吉浦 康寿 教授 奥澤 公一 教授 富永 修 特命教授 小浜湾ではマガキの養殖が盛んで「若狭ガキ」として親しまれています。しかし、この養殖マガキは全て県外産種苗に頼っているのが現状です。そこで、小浜湾で天然発生した稚貝を採取して養殖する、「純小浜湾産」のカキ養殖技術を開発しました。 まず小浜湾内でマガキの浮遊幼生モニタリング調査を行い、採取時期やポイントを定めて天然稚貝の採取を行いました。こうして採取したマガキの稚貝を小浜湾内で養殖したところ、成長が早く、約7カ月で出荷可能なサイズとなりました。国内では数少ない一年ガキとして新たなブランドガキ「小浜はるかぜカキ(仮称)」の創設を目指します。魚粉代替として昆虫を活用した飼料開発先端増養殖科学科 佐藤 秀一 教授海洋生物資源学科 細井 公富 准教授海洋生物資源学部2福井県立大学 30周年研究プロジェクト輸入品目を福井産へ!

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