“リアル”と”デジタル”の融合古生物研究におけるCLOSE UP!恐竜学研究所(恐竜学部附属施設)新種の恐竜を発表2023年9月、福井県で7番目(鳥類を含む)となる新種恐竜を発表しました。この恐竜は、走るのに適した体型を持つ「ダチョウ型恐竜」として知られるオルニトミモサウルス類に属します。従来、ティラノサウルス類に特有と考えられていた特徴がこのグループにも見られることを示す重要な発見であり、「福井の暴君(ティラノ)もどき」を意味する Tyrannomimus fukuiensis(ティラノミムス・フクイエンシス)と命名されました。オルニトミモサウルス類としては日本初の新種です。さらにこの発見により、このグループの起源が従来の推定より700万年以上□る可能性が示され、進化や分布の拡がりを考察する上で貴重な知見が得られました。1mミイラ化したブラキロフォサウルス、通称“レオナルド”の皮膚痕で覆われた左前肢(左)と断層画像から復元した骨化石の様子(右)福井県立恐竜博物館ミム復元図と発見部位(白)ティラノミムスの復元図と発見部位(白)画:G. Masukawa福井県には日本最大の恐竜化石発掘現場があります。1989年に始まった発掘調査は、2023年まで30年以上にわたり継続され、鳥類を含む7種の新種の恐竜類が発見されました。2023年には福井県立恐竜博物館がリニューアルされ、年間100万人以上が訪れる日本随一の自然史系博物館となっています。こうした「恐竜王国」福井において、「学生が恐竜を研究できる場」を提供し、恐竜の研究拠点になることを目的とし、2013年に恐竜学研究所が設立されました。本研究所では、恐竜博物館との密接な連携による展示標本や発掘現場を活用した、いわゆる“リアル(フィジカル)”な研究を中心に据えつつ、最新機器を使用した“デジタル”な研究手法も取り入れ、質の高い研究を展開しています。さらに、福井県内にとどまらず、国内外での発掘調査や標本調査を通じて、多様な研究機関とのネットワークを構築し、恐竜だけでなく幅広い古生物の研究を進めています。近年では、CTスキャン技術を活用した研究にも力を入れ、最新技術を駆使した研究手法の確立と新たな分野の開拓を進めています。デジタル技術が明らかにする恐竜の生態発掘調査に加え、CTスキャンを活用した研究にも注力しています。骨化石を破壊せずに内部構造を解析できるため、未知の恐竜の生態を解明する重要な手法となっています。本研究所では、多様な化石をCTスキャンし、恐竜のケガや病気など、当時の生活環境を明らかにしていきます。海外ネットワーク現場重視の恐竜研究機関として、福井県立恐竜博物館や中国、タイなどの国内外の博物館・研究機関と連携し、共同研究や交流を積極的に推進しています。海外での学会参加に加え、福井県でも国際シンポジウムを開催し、研究レベルのさらなる向上を目指しています。多様な分野との交流本研究所は、開所以来、多様な研究機関と交流を重ね、密接な連携を築いてきました。国内外の大学や博物館、研究機関に加え、産業技術総合研究所発ベンチャーである地球科学可視化技術研究所とバーチャル技術を活用した研究や、地域主導型の実践的なオープンイノベーションを推進しています。66Dinosaur Research Institute
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