群馬大学広報誌 GU’DAY(グッデイ) 2019 Summer
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《 授業のきっかけは自身の体験から 》 そもそもこの授業は熊本の水俣の人々との出会いが始まりだそうです。西村先生 熊本は水俣病が発生した地域で私も熊本に何度も行って、勉強していました。その時に、「群馬にはハンセン病問題があるよね、群馬にいるなら群馬大学がやらなきゃダメじゃない!」と言われて始めたんです。地元に根を張った教育や研究がすごく大事なのだと水俣の人たちに教えてもらいました。広く勉強する必要もあるけれど、実際に何かを解決するためには自分たちの身近な問題を発見して直接向き合うことが大事だと教えてもらいました。《 授業の内容について 》 先生の担当するこの「プロジェクト科目A-Ⅱ」は、学生たちが草津へとフィールドワークに行き、栗くりうらくせんえん生楽泉園などを回り、ハンセン病について学び考えるというものです。 先生によると、先生はこの授業より以前にゼミの学生と栗生楽泉園へ何度も向い、活動をしていたそうです。西村先生 私の専門は行政法についてですが、行政法のテーマの一環として、ハンセン病の問題を取り上げてきました。群馬には草津に国立のハンセン病療養所があるということで、学生と地域の人がお互いに交流して学ぶことがとても大事だと思い、ゼミ生と一緒にハンセン病についての学会へお手伝いに行ったり、地域貢献事業の一環として、一般の方へ向けてスタディツアーなどを行ったりしました。 その後、社会情報学部で「体験型の授業を必修にする」ということが決まり、「プロジェクト科目A-Ⅱ」が始まったそうです。この授業は夏休み中に行われ、草津に一泊して栗生楽泉園の入所者さんにインタビューなどを行い、関連する様々な場所を訪れた後、個人やグループ単位で学んだことを元にレポート作成や発表を行うというものです。希望者が多いため、受講できる人数を制限しており、今年度の予定人数は34人だそうです。プロジェクト科目になってから変わったこと西村先生 2年生はすごくまじめに授業を受けてくれます。3年のゼミ生から「2年生も一生懸命やってくれましたよ」と報告があります。さらにこの学びを深めたいという学生がゼミに入り、このフィールドワークのサポート側として活躍してもらっています。《 学生自身に主体的に考えてもらう 》西村先生 インタビューで事実を本人から聞くということも大事ですが、それは本当に一部にしか過ぎず、その話がすべてではないです。過去はどうなのか、語られていないことはどうなのか、そういった部分を学生自身に考えさせることもこの授業の目的のひとつとしています。グループワークで得られたことを元に、プレゼンをして共有もしています。中でも最も大事なテーマは“ハンセン病の歴史をどう継承していくか”ということ。10年後、20年後には療養所の入所者さんはいなくなり、療養所は閉鎖されるかもしれない。そこで統廃合しようという動きも出ています。そうなったときにハンセン病の問題を知らない人にどのように理解してもらい、歴史を継承していくべきなのか、を考えてもらうことを一番のテーマとしてかかげています。全体報告会という形でプレゼンし、のちに学生個人にレポートとして書いてもらっています。《 実践から学ぶことの重要性 》西村先生 入所者さんとのやり取りには“一期一会”という言葉があるようにこれは最初で最後かもしれない。聞かせてくださった方に「ちゃんと受けとめましたよ」ということが伝わるようにお礼状を書くことを毎年必ずやっているのです。 人と人との直接的なコミュニケーションもデジタル化が進んでいる現代だからこそ、手紙というアナログの形で感謝の気持ちを残すことが重要なのだとお話を伺って感じました。 その点から、この授業は『公務と法律』の授業ではありますが、コミュニケーションという分野では多方面につながりがみられます。13GU'DAY Issue 06 |

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