群馬大学広報誌 GU’DAY(グッデイ) 2019 Summer
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Prole群馬大学社会情報学部 教授西村 淑子 先生(法学博士) Nishimura Yoshiko ハンセン病について知る人がいなくなってしまう前に、現代の若い世代にハンセン病について伝えていくというのも一つの目的だと伺いました。実際に、授業を実施して終わりではなく世間に伝える活動も行っている、ハンセン病の患者さんには後遺症が残っている方もいます。そういった人にも配慮して冊子を音読しCD化したり、学生主体で映画制作も行ったりしているそうです。《 現代に通用する過去事例 》 現在、日本国内でのハンセン病の発病はほとんどいないようですが、事例が少ないハンセン病について学ぶのはなぜなのでしょうか。西村先生 かつてハンセン病では、伝染病に関する差別が問題になりました。皆さんが想像できる現代社会にある差別の問題にはどのようなものがありますか。例えば、エイズの患者さんたちに対して社会がどう向き合うべきか、外国人と日本人のハーフの子どもさんなどに対して「見た目が違うから」とか「日本語がちょっとつたない」という理由から学校でいじめにあうとか、それ以外にも障がいを持つ人に対しての差別、精神病に対する差別、男女差別も残っています。そういう差別において昔の事例を学ぶことが、今の差別がどうして起こっているのか、それらをどうやって解決していけばいいのかということを考えるきっかけ、糸口になればよいと思っています。《 実際に自分で体験することの大切さ 》西村先生 日常生活の中では自分と似たような人に囲まれて生活をしていますよね。差別の問題を言われてもピンとこないでしょう。障がいがある人がいても視野に入ってこないし、気づきません。そのような点で、この授業は日常から離れ、自分の見えなかった部分に気づくことのできる良い機会と言えます。 大学の普通の授業の内容は、知らないことを教えていれば目的としては成り立つと思います。しかしこの授業では単に“知らないことを知った”という抽象的な知識を得るだけでなく、実際に当事者に会いに行きます。実際に相手の方を目の前にすると「その人の役に立とう」とか、問題を解決しようという姿勢で接しなければ、相手が「自分たちはただの実験、観察の対象なの?」と思ってしまうかもしれません。研究する人や学生も、学校の中での勉強なら「あぁそうだったんだ」と想像するだけで終わってしまいますが、苦しんだ人や現在苦しんでいる人などを目の前にしながら学ぶ時、私たちは、そうした人々の前をただ通りすぎることはできません。それが大学の施設の中で勉強することと、現場に行って当事者や被害者の方に会って学ぶということの一番の大きな違いですね。《 大学で学ぶことの本質とは 》 最後に、先生はこの授業を通じて、本来大学で学ぶべきことは何なのか、その本質を語ってくださいました。西村先生 公務員試験に合格するために勉強することも大事です。でも本当に大学で勉強すべきことは当事者が置かれた具体的な状況などを何か一つリアルに感じることです。進化が著しい時代、この学部だからデータの活用とかパソコンの利用に特化しているけれど、「本当にその人のことを助けよう、解決しよう」と思ったら、その現場に行かないと解決できない。だからこそアナログでの問題も決して忘れてはならないということもこの授業を通して社会情報学部の学生さんには念頭に置いてほしいと思っています。成城大学大学院法学研究科博士課程修了【専門分野】 行政法、 環境法【研究テーマ】 アメリカの環境訴訟、行政訴訟の原告適格、福島原発事故による被害者の救済【担当科目】 行政法Ⅰ・Ⅱ、環境法Ⅰ・Ⅱ、社会情報学プロジェクトA-Ⅱ群馬大学社会情報学部ホームページ国立療養所栗生楽泉園ホームページCheck !15GU'DAY Issue 06 |

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