群馬大学 医学部 入学案内2019
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2高度で良質な医療を提供するために必要なのは、学生のころから一貫した医療安全教育。本学が今、最も力を入れている安心・安全な医療の提供を目指す教育が生まれた背景と、今後の展望などを医学科、保健学科両学科長が語った。医療安全=Patient Safety安全な医療に欠かせない多職種連携石崎 安心できる安全な医療を提供することは医療従事者の使命です。群馬大学医学部は、医療を提供する人材を教育・育成する機関です。本学部では医療の世界を目指す学生たちが、しっかりとした安全教育を身につけられるカリキュラムを用意しています。医療安全とは、英語で言うとPatient Safety。患者さんの安全です。医療従事者が患者さんに安心安全な医療を提供すること、と私は認識しています。村上先生は、いかがですか?村上 そうですね。基本は、患者さんが安全な医療を受けるということ。さらに、それを支える体制も含めて医療安全と言うのではないかと思います。そのために必要な医療安全に対してしっかりした意識を持った人材を育てることが、大学として大事になってきます。石崎 今年4月、東京で第3回閣僚級世界患者安全サミットが開かれました。ここに参加された方の一部をお招きして、群馬県内でシンポジウムを開催し、Patient Safetyについてお話をいただきました。その中で非常に心に残ったのは、イギリスのPatient Safetyの重鎮であるマイク・ダーキン先生がおっしゃった「最終的に医療の質を確保する秘訣は『愛』だ」という言葉。まさにそのとおり、と強く感じました。また、医師、看護師、臨床検査技師、作業療法士、理学療法士といったチームワークの重要性が明らかになったシンポジウムでした。村上 安全な医療を提供するためには、本学で力を入れている多職種連携、チーム医療が非常に大切です。このシンポジウムで、本学はチーム医療では世界的にトップレベルの取り組みをしているとの評価をいただきました。実際、これらの実績が評価されて、2013年には群馬大学はチーム医療教育・研究を推進する機関として、WHOコラボレーティングセンター(WHOCC)に指定されました。現在、日本国内で27機関、6つの国立大学がWHOCC指定を受けていますが、保健人材育成部門で指定を受けたのは、本学保健学科が国内ではもちろん、世界でも初です。今ではチーム医療教育を海外にも広めるために、本学の先生方が南アジアや東南アジアに出向いて講演会やワークショップを開いています。また、チーム医療教育のトレーニングコースを設けて、これらの国々の大学教員や医療従事者を日本に招いています。これらの地域では、人口に対して医療従事者が大変少ないのです。特に医師の不足は顕著です。そうなると、一層大切になってくるのがチーム医療です。優秀なメディカルスタッフを育てないと、医療が成り立たない状況なのです。そのためにチーム医療教育が必要なのです。保健学科には、20年近いチーム医療教育の歴史があります。また、教育だけではなく、チームワーク実習や講義などの教育を施した後に生じる学生の意識の変化を調査・解析して、その効果を検証する研究も積み重ねてきました。英語の論文も多数執筆しています。その効果の一つをご紹介します。多くの学生は、チームワーク実習の後、「いろいろな分野におけるチームワークのあり方」や「チームワークの重要性」などはよく理解できたが、「自分の職種の専門性と独立性」の理解が不十分であることが分かり、その改善にあたりました。明らかなことは、他職種の役割を理解し、自分との関連を理解安心・安全な医療の提供を目指 医学科長石崎 泰樹 (いしざき やすき)昭和56年 東京大学医学部医学科卒業昭和60年 東京大学大学院医学系研究科修了昭和60年 岡崎国立共同研究機構生理学研究所特別協力研究員、日本学術振興会特別研究員昭和62年 東京医科歯科大学歯学部附属顎口腔総合研究施設助手(~平成9年)平成 3年 ロンドン大学ユニヴァシティカレッジ生物学部客員研究員(~平成6年)平成 9年 神戸大学医学部助教授平成13年 群馬大学医学部助教授平成15年 群馬大学大学院医学系研究科助教授平成16年 群馬大学大学院医学系研究科教授 平成29年 群馬大学医学部長 群馬大学大学院医学系研究科長 群馬大学教育研究評議会評議員● 医学博士Gunma University Faculty of Medicine

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