群馬大学 医学部 入学案内2019
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5講義があるのは、私の知る限り群馬大学だけですね。この講義の中のケーススタディは提示した事例について学生にどう考えるかを問うもので、正解はありません。担当の服部先生が作成したDVDを拝見しましたが、どのような解決法があるか、すぐには分からないケースがほとんど。非常に勉強になります。医学・医療の知識が全くない1年生のときと、臨床実習を経た後では考えが変わるでしょうから、1年生だけの講義で終わらせるのではなく、高学年までシームレスに教育ができる仕組みができればいいと思っています。村上 医療事故が起こったときの対応も教育の中に入れておいた方がよいと考えます。シンポジウムでも、「医療事故が起こることは大前提である。そこで、起こってしまった医療事故にどう対応するかが重要であることや、個人を責めるのではなく組織をチェックしてそれをどう改めるのか」が医療安全につながるという話がありました。医療事故に対する誤った対応法が医療の世界に広まると、適切かつ応用力のある医療ができなくなります。医療事故に対する対応には、医療体制の検討、医療従事者の意識改革、法律なども関わってきますが、医療安全教育では欠かせないテーマと考えます。課題はアウトカムのフォロー在宅医療の専門家育成に尽力石崎 医学科は、医学を通して人類の福祉に貢献できるような人材を育てることを目指しています。村上 私たちが望む姿は2つあります。1つは、チーム医療に貢献できる高い倫理観を持った保健医療人の育成。もう1つは、高い知識と技術を持った高度専門医療人の育成。この二本柱でやっています。石崎 医学科はアウトカムを大切にする教育に舵を切っているのですが、残念なのは個人情報保護の関係で、卒業生がどのように社会的に貢献しているかがフォローできていない点です。どういうアウトカムが産み出されたかが分からないのです。そこが一番の課題です。アウトカムに関する情報を分析してそれを医学教育の改善にフィードバックしなければ教育のPDCAサイクルはうまく機能しません。せめて、県内で勤務する医師の実態が分かる体制ができないか、と群馬県に依頼しているところです。村上 保健学科では、先ほども申しましたように大学院への進学を勧めています。現在、厚生労働省が、住み慣れた地域で充実した生活を送って最期を迎えるという「地域包括ケアシステム」を進めており、医療が病院中心から在宅中心に変わりつつあります。しかし、体制が追いつけないのが現状です。保健学科では、それを支える人材養成に力を入れています。平成26年度に開始された文部科学省「課題解決型高度医療人材養成プログラム」の群馬大学における事業に「群馬一丸で育てる地域完結型看護リーダー(通称群馬GP)」というプログラムがあります。これは、健康長寿社会の実現に関われる優れた医療人材を養成するために、本学が構築した特色ある教育プログラムです。このプログラムでは、在宅医療教育を推進するための学部カリキュラムの再編成と、大学院における在宅医療専門の看護師養成が柱となっています。さらに、すでに在宅医療の現場で働いている看護師さんに対して履修証明プログラムも開講しています。一度社会に出ると忙しくて勉強をする機会が減りがちですが、医療の進歩は著しいため、それに対応できる知識・技術を学ばなければなりません。石崎 保健学科の博士前期課程は昼夜開講でうまくいっていますね。医学系研究科にも修士課程(生命医科学専攻)がありますが、現状では昼間しか開講していません。その点が近年修士課程に入学する学生の減少の原因の一つでは無いかと考えています。さらに多くの学生を迎え入れるために、理工学府と共通のプログラムを組んで医理工連携を強化する話も具体化しています。本学で深い知識と確かな技術を学び愛ある医療人に村上 社会の様々な問題に対する関心を持ち、人に対する愛情をしっかり持った学生さんに入学してもらいたいですね。そして、入学後は、メディカルスタッフのリーダー、保健学の研究者・教育者になる意識を持って勉学に励んでいただきたいと思います。群馬大学保健学科は2014年に文部科学省によって行われた「ミッションの再定義」で高い評価を得て、「実践科学の学術的追求を通じた次世代指導者・教育者・研究者養成」グループに分類されました。このように教育体制はしっかりしていますので、安心して入学してください。石崎 先ほどもお話ししたように医学科は、医学を通して人類の福祉に貢献できるような人材養成を目指しています。具体的に言うと、医学研究の最先端で活躍できる人材、医療行政を通して社会の福祉に貢献できる人材、臨床の最先端で活躍できる人材です。いずれかの道で社会に貢献したいと願っている人に入学していただきたいですね。先ほど申し上げましたように、医学科ではアウトカム基盤型のプログラムが整っています。「何を学ぶか」ではなく「何ができるようになるのか」が明確です。本学でさまざまな知識や技術を身につけ、愛ある医療人として羽ばたいてほしいですね。対 談石崎 泰樹 医学科長×村上 博和 保健学科長

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