群馬大学広報誌 GU’DAY(グッデイ) 2020 Winter
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Q1 「体育科指導法」の目的は何ですか。A 小学校に限らず、中、高を含めすべての学校の授業というのは学習指導要領に基づいて実施されるものであるので、まずはその学習指導要領の中で体育の授業がどのような目標、方法、評価によって行われているのかを理解してもらうといった、基礎的な知識を得てもらうことが目的です。 さらに、どう子どもたちに指導して行くのかという指導方法に関する基礎的な技能を身につけてもらうことも目標としています。木山先生 逆に質問ですが、どうですか?今までの授業を受けてみて。島田 教師目線で体育を考えたことがなかったなと思います。木山先生 そう!実際、教師目線で体育を考えたことがなかった学生さんの方が多いと思います。今までは授業を受ける側の立場でしか「体育」を捉えられなかったけれど、今度は教える側になって、どんな風に授業を作っていけばいいのか、教えていけばいいのかといった、授業の構造を学んでもらって、実際の学校現場でどのように教えたらいいのかを理解してもらう授業が、体育科指導法です。Q2 学校現場における体育の授業の役割は何でしょうか。A 学習指導要領において、平成29・30年改訂の新しい学習指導要領の中でもそうなのだけど、「体育」では子どもたちに身につけさせたい資質能力として、まず『知識及び技能』、『思考力・判断力・表現力』、そして、『学びに向かう力、人間性』という大きな三つをあげています。総論すると、最終的に「体育」の授業の役割って、生涯スポーツにつなげることなのです。 皆さんは人間にとってスポーツをやったりする身体運動が、すごく良いことだよっていうのは分かっていると思います。だけど、高校を卒業して、大学や社会に出た時に、運動する機会がもしかしたら無くなってしまうかもしれません。 だから将来、大人になって、お母さんお父さんになって、おじいちゃんおばあちゃんになってもずっとずっと生涯を通して、自発的にスポーツを続けてくれることが、究極のねらいなんです。小・中学校では、器械運動とか陸上とか水泳とかすべての領域(種類)の運動を、中学校2年生までに一通りやります。そして中学校3年生から高校生になると、それが選択制になっていき、自分が興味のある運動を選んでより深めていく流れが、さらに大学へと引き継がれていくようになっていますね。Q3 学校現場で体育の授業を行うときに重要なことは何でしょうか。木山先生 「体育」も学習だから、算数とか数学とかみたいにちゃんと系統的な学びになっているはずなんだけれど、それが先生たちに理解されていないから、いつも単発で終わってしまう。島田 確かに、「楽しかった」で終わっていました。木山先生 それだけで終わってしまうことは、すごく問題です。現場の先生たちは、実際「何を教えたらいいのか」、「何から教えたらいいのか」がわからない。一応、指導要領には書いてあるんだけど、すごく長い文章で難しく書いてあるから・・・。例えば、リズムやイメージの世界に没入してなりきって踊る、ダンスなどの表現運動って何を教えるのかっていった時に、それを明確に先生たちが伝えることができないから、子どもたちも「何をやっているんだろうな」って、授業の意味をつかめないまま、音楽に合わせて新しく踊って楽しかったね、で終わっちゃう。 体育は「技能」を教える場だと思っています。もちろん、技能以外にもさっき話したような、思考・判断・表現であるとか、学びに向かう力・人間性っていうのを、能力は関連しているから、すべてしなさいよっていう指導要領になっているけど、体育の特性は技能向上にある。何かが新しくできるようになる、何かが上手になるっていうというのは、子どもたちのモチベーション形成にもなってきますよね。今日は跳び箱3段まで跳べるようになったから、明日は4段まで跳べるかもとか、もっと他にも難しい技ができるかも!みたいなことが、子どもたちの中では一番のモチベーションになるから、そこをうまく活用しながら、いかに技能向上させてあげるかが、教師の腕の見せ所です。 入口として「表現運動(ダンス)って楽しい!」ってところをわかってもらいつつ、小学校の段階は、いろいろな18| GU'DAY Issue 07

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