群馬大学広報誌 GU’DAY(グッデイ) 2020 Winter
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実験しているのは全体の時間の3割~4割。残りは他の人と連絡を取ったり、「どういう価値があって、なぜ助けてほしいのか」を伝えたりする作業が多かったです。それに学生の身分では気付きにくいことですが、「働いている大人からお金を頂く」ことがすごく大変だと感じました。資金面で支援をしてくれた方々の中には、雑談がきっかけとなったこともありました。偶然のつながりも強く感じました。聞:確かに人生は何が起こるか分かりませんね。実際のボストン大会ではどのようなことをなさったのですか。北:今回は、プレゼン1回とポスター発表2回です。プロジェクトとしては、「特定回数分裂した後に急に死ぬ大腸菌」、つまり時限爆弾のような仕組みを作っていたのですが、時間が足りず実験が途中までしか終わりませんでした。これは悔しかったです。あとは現地で他のチームとの交流や、情報収集にも力を入れました。聞:日本以外の国の参加者はどうでしたか?北:全く別物です。全てのチームがというわけではありませんが、比べ物にならないぐらい上手かったです。プレゼンの完成度はヨーロッパやアメリカが特別でした。聞:具体的にどういう点が違いましたか?北:アジア勢はいきなり研究の内容から入りがちなのですが、MIT(マサチューセッツ工科大学)などは、発表者がそれぞれ挨拶と名前を言った上で研究内容に触れるんです。それだけでかなり印象が違いました。「もっと聞きたい」という空気になっていたんですよね。プレゼンターが原稿を見ないのはもちろんです。聞:凄いですね!北:ですよね。うちのチームでは「丸暗記はする必要がないのでは」という意見もありましたが、私はそうは思いません。上手いところはやはり全く原稿を見ていなかったし、ベストプレゼン賞をとった台湾の大学は、エンターテイメント形式でゲームマスターのような存在がいたりと、対話形式で進んでいました。聞:プレゼンの仕方一つでも違いがあり、それによって結果も異なるんですね。北:そうですね。最も重要なのは実験と結果であることに変わりがないのですが、もっとプレゼンが上手くなる必要があると感じましたし、英語ももっと流暢に話せるべきだと思いました。聞:ほかに何か新しい発見や得たものはありますか?北:期待に応える大切さを知りましたね。MITや他大学の学生を見て、「一流であるためには他人の期待を裏切らないことが大切だ」と感じました。聞:他人の期待を裏切らない…難しいことです。北:ですね。例えば京都大学は今回の大会で着物を着て、タンパク質の形を折り紙で作り、全員が流暢な英語で進めていく。みんなが京都大学に期待していることをやっていたんです。    自分のことを変える勇気聞:来年度以降のiGEM群馬大学チームはどうなるとお考えですか?北:群馬大学とiGEMはがっつり組み合っていると思います。学習環境だって他大学に比べて優れていますよ。聞:どのような点で相性がいいのでしょうか。北:まず授業の質が高いと感じます。基礎学力を重視している大学だと思います。iGEMは環境が良くないとできません。実験場所を確保できることや指導教授がいることはもちろん、大学が応援してくれないと難しいんですよ。そして何より、メンバーにやる気があって、iGEMに時間を割く時間や労力を捻出できることが大事です。群馬大学にはiGEMをやるにはピッタリな環境がありますが、学生の主体性、チャレンジ精神が少し控えめなことが惜しいです。学生が自分で自分のことを変える勇気を持ち、目標に向かって行動することができたら、群馬大学全体がもっと魅力的になると思いますよ。23GU'DAY Issue 07 |

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