群馬大学広報誌 GU’DAY(グッデイ) 2020 Autumn
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0102一説によると日本には1000種類を超える妖怪が伝えられているとも言われます。こうした背景には日本の山あり川あり四季の変化に富んだ、多彩な環境が影響しているのかもしれません。群馬大学共同教育学部准教授 市いちかわ川 寛ひろ也や 先生『妖怪採集のすすめ』 「美術」や「教育」と妖怪がどのように関係してくるのか疑問に持たれるかもしれません。私は「芸術」を学術的に探究する「芸術学」を専門にしてきたのですが、その中でも日本各地で行われる芸術祭やアートプロジェクトなどを事例に、芸術と地域との関わりに着目しています。専門的な言葉で「コミュニティアート」などとも呼ばれます。こうした研究を進める中で、芸術を通して地域の個性があぶりだされる現場を目にしてきました。最近ではアーティストがつくった「作品」を受け身で鑑賞するだけではなく、様々な立場の人々が芸術活動に参加する取り組みも増えてきています。特別な才能を持った人のためだけの「美術」ではなく、誰もが担い手になり得るという考え方ですね。そんな時、私の脳裏をふとよぎったのが、幼い頃から興味を持っていた「妖怪」と「コミュニティアート」との共通性です。筑波大学人間総合科学研究科にて現代の妖怪文化をテーマとする研究で博士号を取得。東京都豊島区の学芸員(文学・マンガ分野)、筑波大学、東北芸術工科大学の教員を経て、2019年4月より現職。【研究分野】芸術教育学(特に地域に根差した教育実践)、文化資源としての妖怪研究芸術学と妖怪研究紹介 妖怪文化に関する研究は、民俗学や国文学などを中心に多くの蓄積があります。それぞれの分野で、例えば共同体で語られてきた民間伝承や文学作品などを対象に研究が進められてきました。芸術学の対象として妖怪を扱う時、 絵巻や浮世絵などに描かれた妖怪を研究する美術史的な方法をとることもできます。しかし、私の場合は同時代の妖怪文化についても考えてみたかったため、「妖怪はいかにしてつくられるのか」という問いを立てることにしました。妖怪研究の観点ProfileThemeIntroduction to one of the GU Researchers !21GU'DAY Issue 08 |

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