映画『突然失礼致します!』のテーマ「希望」について福井:今回「希望」というテーマで180本もの作品が集まったわけだけど、どんな風に受け止めた?熊谷:第一は「嬉しい」、かな。コロナウイルス感染症拡大の影響で、映画を撮りたくても撮れない、自粛が余儀なくされる中で、これほど多くの映像作品が集まり、1本にまとまったのは本当に嬉しいね。最初は180本も集まるとは思っていなくて、集まったとしても100本くらいかなと考えていたけれど、実際にはその倍近くの作品が集まったから。嬉しいのと同時に驚いたし、とても感謝したね。福井:これだけたくさんの作品が集まって作られたオムニバスは過去にもないんじゃないかな?「希望」というテーマで映画を制作したけれども、集まってきた作品のなかには明るいものもあれば、逆説的に暗いものもあったから、本当にさまざまな監督の想いがつまった壮大さを感じたね。熊谷:「希望」っていうテーマは抽象的で、具体的に何を意味するのかは人それぞれで分からない。当初はZoomドラマが多く集まってくると予想していたけど、アニメ、ドラマ、SF、時代劇、ヒーローショーと、本当にありとあらゆるジャンルが集まってきたから、想定外だったね。福井:「室内で3密を避けた状態で制作する」という条件を付けたのにもかかわらず、これだけの作品が出て来たことに驚いた。全体的にアニメ作品が多く集まったけれども、CGや専門技術を駆使した作品も多かった。それぞれの団体の長所を活かした作品一つ一つが、『突然失礼致します!』の作品全体のクオリティを更に高めてくれたように感じるね。熊谷:美大や芸大から送られてきた作品は「さすがだな」と思う出来栄えだったけれども、自分たちのような普通の四年制大学からもビックリするような作品が送られてきたから、「全国にはコロナ禍でもこれだけの作品が撮れる監督がこんなにいたんだ」と分かった。これは今後の映画の世界に対しても喜ばしいことだったんじゃないかな。福井:美大や芸大以外からもクオリティの高い作品が送られてきたことは、ある意味予想を裏切ってくれたよね。熊谷:負けていられないと思った。 映画『突然失礼致します!』で何を表現できたか福井:ありとあらゆるジャンルの作品が送られてきたけれど、1本にまとめた今回の映画で何が表現できたのか考えてみようか。熊谷:創作性じゃないかな。「撮りたくても撮れない」、という想いを形にできた。180通りの希望を描けたことは一つの表現の形だと思った。自分としては“固定観念の破壊”ができたと感じた。福井:固定観念か。例えば?熊谷:「映画は多くの個性の協働によって作られる」という固定観念だね。それを壊したと思っている。撮影は最少人数で行い、3密を避けた環境下でここまで撮れた。自粛期間は、外出自粛を必要があっても、活動を自粛する期間ではないと思っていたので、そういった観点からも、本作で「コロ12| GU'DAY Issue 09
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